「氷点」「銃口」などの代表作の著者である三浦綾子。その三浦氏は旭川市出身であり、一時期を除き、生涯旭川にすみ続けた。旭川の歴史そのものを知り、作品の中で表現をしている。
本書は三浦氏の生誕90年を記念して、遺稿の中から三浦氏の人生の大部分を過ごした旭川の回顧をエッセイ仕立てで綴ったものを取り上げている。
第一章「旭川だより」
三浦氏は人生の大部分を旭川で過ごした。しかし著者は若いとき、その旭川を好きでなかったのだという。それ以上に札幌に住みたい、という願望が強かった。
それを知ったとき、自分自身が旭川で過ごした時とほとんど同じように映ってしまった。自分自身も当初は早く旭川から離れて札幌や東京に移り住みたかった。そこで働きたいという願望が強かった。その願望通りになった今では旭川に対する郷愁が芽生え、早くではないが「いつか故郷に戻る」という気持ちも出てきた。
私事はここまでにしておいて、三浦氏は若かりし人生の中でキリスト教に出会い、洗礼を受けたことについても綴っている。
第二章「丘の上の邂逅」
「一期一会」という四字熟語が存在する。この「一期一会」は様々な恩師や医師、牧師、友人、知人と出会った。その出会いと別れが、冒頭部で書いたような三浦綾子作品を生み出す土壌を培っていった。
第三章「旭川とわたし」
旭川ほど春・夏・秋・冬、四季折々の季節を味わえる地域はなかなかない。特に夏は湿度は少ないものの30度を越えるほど暑く、冬になれば朝は氷点下20度を下回るほど凍える。
遠い、川崎の地にすむ自分にとっては耐えられないような寒さを懐かしんでしまう。今年記録的な大雪が降り、0度前後の寒さを経験しても、である。
旭川の魅力―
私もセミナーやパーティーなどで様々な人と出会うがよく言われるのが「旭山動物園」である。それしかイメージがないように言われてしまうのだが、そうではない。
日本初の歩行者天国である「買物公園通り」もあれば、ラーメンと酒が楽しめる「3・6街」もある。ラーメンと言えば冬でもアツアツと楽しめる醤油ラーメンでおなじみの旭川ラーメンもあれば、銘酒「男山」や「国士無双」もある。
だんだん自分の嗜好になってしまったが、列挙してもきりがないくらい旭川の魅力はたくさんある。
旭川市には三浦綾子氏の功績を讃え、「三浦綾子記念文学館」が1998年に建てられた。そこには三浦綾子氏の生涯と作品の舞台にまつわるものについて展示されている。
自分自身も旭川出身だけあって、三浦綾子の作品、また生涯にまつわることについてもいくつか学校で学んだことがある。しかし三浦氏の「旭川観」をありのまま表現した本書は、遠く離れた所にいる自分を、自ら生まれ育った故郷へ引き戻してくれる。そんな気がした。
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