ビジネスモデル分析術~数字とストーリーでわかるあの会社のビジョンと戦略

著者の一人である望月様より献本御礼。
会社によってビジネスモデルが対極にある企業も少なくない。本書で紹介される「対極」と呼ばれる企業は大企業であり、売り上げの規模も大きい。しかし、どのような形で「対極」にあるのかはビジネスモデルを学ぶ、あるいは会計を学ぶ機会が無いとあまり良くわからない。
本書は対極にあるビジネスモデルについて、5組10企業を紹介しつつ、どのような形で「対極」にあるのかを分析している。

第1章「フェイスブック Vs. グリー」
両企業とも時代の潮流におり、どちらもSNSサイトとして有名であるが、収益構造やターゲットと言った所で大きな異なりを見せる。
簡単なところではユーザ数。フェイスブックは全世界で約8億5000万人存在する一方で、グリーは日本のSNSであるため、約3500万人しかいない。
収益構造の違いというと、フェイスブックでは「広告媒体」、フェイスブックのサイトを見るとPCでは右に、スマートフォンでもタイムラインの中で広告が存在する。その広告はフェイスブックに広告料を払って掲載している。(これは企業でもフェイスブックページでも同じ)
一方グリーはソーシャルゲームの課金を主体にしている。2012年春あたりに話題となったのが「コンプリートガチャ」問題が挙げられたことは記憶に新しい。

第2章「グーグル Vs. ヤフー」
検索エンジンとして有名な「グーグル」と「ヤフー」。検索エンジンであることに共通性はあり、グーグルもヤフーも広告収入を得ていることでも共通性はあるのだが、相違点としてはグーグル、ヤフーそれぞれの外との関わりである。
方やグーグルでは様々な企業を買収し、急成長を遂げてきた。
方やヤフーでは様々な企業と連携・提携して、相乗効果でもって緩やかな成長を続けている。
その変動が緩急あるか、コンスタントにあるのか、これは不思議なことに決算書にも表れている。

第3章「アップル Vs. ソニー」
アップルとソニーのライバル関係、それは携帯音楽機としてAppleでは「iPod」、ソニーでは「Walkman」が存在する。2000年代に入ってから「iPod」が誕生し、たちまち売り上げで「Walkman」を抜いた。ところがスマートフォンの競合や「Walkman」の復調によって拮抗している状態にある。
どちらもメーカーであるのだが、経営のスタイル、さらには現状など、相違がある箇所もある。
「アップル」はパソコンやガジェット、アプリケーションソフトのみ開発・販売する「シンプル経営」に対し、「ソニー」はテレビやパソコン、ガジェット、映画、音楽、エンターテイメントなど様々なジャンルに裾を広げている「多角的経営」を行っている。
そして相違のある点で代表されるものとして「赤字」が挙げられる。アップルもソニーも赤字を経験した時期がある。とりわけアップルは90年代に経営危機に陥ったが、スティーブ・ジョブズが経営に復帰し、急激に売上・利益を伸ばし、経営を立て直した。逆にソニーは根幹と言える携帯電話やゲーム機といったガジェットの売上不振がネックとなり、現在も赤字経営が続いている状況にある。

第4章「サムスン Vs. パナソニック」
双方とも「グローバル企業」として名を馳せる企業である。しかし経営戦略、そして現状の利益に関して大きな相違が見られる。
経営戦略でいうと、サムスンは「マーケティング」や「デザイン」を重視した経営、一方パナソニックは「技術」を重視した経営にある。
また現状の利益でいうと、サムスンはスマートフォンやタブレットPCといったガジェットを中心としたものを中心したこと、及びアップルという仮想敵をつくり訴訟まで起こしたことにより認知されたことにより利益を伸ばした。一方パナソニックは根幹となった液晶テレビなどの売り上げ減少によるもの、あるいは経営合理化による退職一時金や経営統廃合による資金がかさんだことにより、過去最大の損失を被ってしまった。

第5章「アマゾン Vs. 楽天」
書籍ポータルサイトの代表格としてアマゾンと楽天を取り上げている。さらに言うと双方とも電子書籍業界にも進出しており、ともに鎬を削っている状態にある。
しかし経営の根幹、及び主力サービスは双方で異なる。方やアマゾンは書籍などの商品を「直販モデル」による利益が中心であり、楽天は「楽天市場」を主軸に様々な店からもらう「出店料」や「広告料」が利益の中心である。

第6章「注目企業の数字を分析する」
対極にある企業の相違点を分析するものの一つとして決算書にある「数字」を分析することの重要性を説いている。しかし財務諸表の「ざ」の字も知らない人はどこを見たら良いのかわからない。本章では分析について、用語とともにわかりやすく解説しており、IR情報のどの部分を見たら良いのかも指摘している。

第7章「ビジネスモデル分析術」
最後にビジネスモデルを分析するための情報収集法について書籍やホームページを紹介しながら開設をしている。

本書は就職・転職活動のみならず、新しく事業を興すためにビジネスモデルを構築するためにどのようなモデルを構築したら良いのか、あるいは対極にあるビジネスモデルをどのようにして比較したらよいのかを公認会計士の視点から分析・解説を行っている。ビジネスモデルを構築する時にネックになる「数字」を解決することのできる一助として大いに役立つ一冊である。