記念日の創造

そろそろゴールデンウィークを迎える。毎日のように仕事をしている自分自身にとってはあまり関係のないことであるが、定期的に休みがとれる人であれば、これ以上の連休は年末年始をのぞいて存在しない。

その「ゴールデンウィーク」は祝日や祭日がいくつか組合わさったことによって「連休」となった。

「祭日」や「祝日」は「記念日」となるのだが、その記念日はたとえば、国として定まったもの、あるいは独立などが起こったとき、あるいは大統領や天皇といった方々の誕生日を表されることがほとんどである。
その「記念日」はいかにして作られたのか。本書は様々な国の「記念日」をもとに考察を行っている。

<記憶を造形する命日>
イギリスの政治家であるベンジャミン・ディズレーリについてを取り上げている。その日(4月19日)は「プリムローズ・デイ」と呼ばれている。これはディズレーリがプリムローズ(サクラソウのこと)を好んでいたことからあらあわしており、当時の英国女王であったヴィクトリア1世が宮廷の庭に咲いていたプリムローズの花をディズレーリに送った、という説も存在する。

<大地に軍隊を捧げた命日>
ドイツでは9月29日に「聖ミカエル生誕の日」が存在する。その9月29日のあとにくる日曜日に「収穫感謝の日」という記念日がある。
この記念日は1934年、ナチスドイツが「ドイツ農民の日」を国家称揚のために「収穫感謝の日」と名付けたことが始まりだった。
その日には、必ず「収穫感謝祭」を大々的に行ったのだという。

<中国の祭日と死者を巡る物語り>
日本の祝日の中には中国大陸から伝来しているものがある。最初にゴールデンウィークについて書いたのだが、その中の一つである5月5日は「こどもの日」と呼ばれているが、別名「端午の節句」と言われている。この「端午の節句」は中国大陸の春秋戦国時代からきている。
また、3月3日は日本では「ひな祭り」であるが、中国大陸では「上巳の日」と言われており、清めの行事が行われる日であったという。

<思い出せない日付>
現在の中国には春節や端午の節句をはじめ、様々な記念日があるのだが、中でも7月1日を本章では取り上げられている。
その日は「中国共産党 第一回全国大会」が挙行された日である。今から82年前の1921年の話である。そのときは孫文ら中国国民党が支配し、「中華民国」が建国された時代である。当時の中国共産党は数十人程度しかおらず、中国大陸の人々もその存在すら知られていなかった。現在では史料として残っているのだが、その多くは改竄されており、どのようにして成り立ったのか、正確な史料がほとんど存在していないのが現状である。

日本にも様々な記念日があるのだが、世界と裾を広げてみると、1年366日がすべて「記念日」で埋め尽くされるほど多い。その記念日は人の死や国家称揚のために定められたが、どのように作られたのか不明なものまである。本書はその一部であるが、記念日の縮図として大いに理解できる一冊といえる。