携帯電磁波の人体影響

最近ではスマートフォンが急速に出回っていることから携帯電話はものすごい勢いで進化をしている。携帯電話が一般に出回り始めたのがだいたい1990年代あたりだが、その時は心臓ペースメーカーが異常動作する関係から優先席付近で携帯電話を切るような決まりが作られた。ただ前述の通り携帯電話は進化をしているのだが、今度は「周囲の迷惑」という理由から「優先席付近で携帯電話は禁止」というルールは変わっていない。

話は変わるが、この携帯電話から発する電磁波による悪影響を懸念する医師や学者も出てきており、本格的に研究している学者も少なくない。またその電磁波に対して政府単位で対策を打ち出している所も出てきている。しかしその「電磁波」による人体影響はまだ解明できていない所が多い。
本書はその影響からくる問題について、そしてその問題について国はどのように動いたのかについて考察を行っている。

第一章「ついに米国議会が動き出した」
米国議会では2008年、下院の「政府改革委員会」にて取り上げられたという。その議長を務めたのが、民主党のデニス・クシニッチ。オバマが当選した米国大統領選挙にも立候補した人でもある。その中では携帯電話を使用することによって「脳腫瘍」になった、と言うものである。その原因は電磁波であるのだが、それを証明するための材料が十分ではなかった。

第二章「携帯電話会社に対する訴訟」
訴訟大国であるアメリカだけあって毎日些細なことで訴訟を起こすこともある。携帯電話の電磁波による健康への悪影響に関しても例外ではない。
それにより携帯電話会社に対して訴訟を起こした事例も1999年以降幾度となく起こっており、原告側の言い分が認められた例も存在する。

第三章「健康影響を示唆する調査結果」
では、携帯電話を使用したことによる健康への悪影響はどのような調査が進められ、どのような調査結果が出てきたのか。
現時点でわかっている点で、10年以上使用している人とそうでない人との脳腫瘍のリスクの差が、使用していない人に比べて3.9倍高くなることが明らかになった。他にも男性では精子の質が低下するリスクがあると言われているが、そこについても本章にて調査結果を記載している。
しかしその調査結果に関しても欠陥があることも本章にて指摘している。

第四章「安全対策を加速させる欧州諸国」
そういった懸念に素早く反応したのがEUをはじめとした欧州諸国である。
フランスではその中で最も迅速に反応を示しており、携帯電話の電波を媒介する基地局が健康への悪影響の調査を進めている一方で、その基地局があることにより、がんになったという訴訟も起こっている。

第五章「日本の政府は守ってくれるか」
では日本ではどうなのか。
ニュースを調べてみると、日本における電磁波対策はほとんど無い。その一方で、民間では電磁波に関する調査も進んでおり、その結果をもとに民間単位で規制したり、携帯電話持ち込みを禁止したりする活動が進められている。

携帯電話における健康への悪影響はまだまだ解明されていない所が多く、調査結果をもとに解明されたものでも疑問点は残っている。しかし対策を講じるのは決定的な証拠が出るまで待っていては遅いという。それは私も同意するのだが、それがヒステリックに広がり続けることによって「たばこ」のように「携帯電話=悪」という図式ができ、それを使用すること、あるいは広告することそのものまで規制されたりするようなことになって欲しくない。研究が進んでいないのにそれが独り歩きしてしまい、あたかも一方的な議論になるほど危険なものはないのだから。