新幹線を運転する

2013年3月のダイヤ改正より、世界一速い新幹線が変わった。かつては東海道・山陽地方を走る「のぞみ」だったのだが、このダイヤ改正により、東北を走る「はやぶさ」となった。時速にして320Kmであるという。

私事の話に移るが、私はこれまで旅行したことはあまりなく、新幹線を利用したこともほとんど無い。その利用した新幹線も実は「のぞみ」しか利用したことがない。「のぞみ」の他にも様々な新幹線があることは知っているのだが、利用していないため実感がわかない。ただ、これから仕事の関係で乗ったことのない新幹線を利用する機会も出てくるので、逆に「楽しみ」になる。

さて、本書はその新幹線の「運転」はどのようなものなのかを取り上げているが、普段客席にいる私たちに取ってはあまり馴染みのないものである。運転席の見える電車とは違い、あまり運転席を見る機会もないため、刺激的な内容と言える。

第1章「新幹線を操る」
新幹線を操る人、つまり運転を行う人のことを「新幹線運転士」と呼ばれているが、その運転士は経験年数によって「主任運転士」や「指導運転士」といったものになるのだという。その運転士が運転するにあたり知っておかなければいけないこと、あるいは運転を行い、終点に到着するまでの一連の行動を紹介している。
新幹線が誕生して間もない頃、イギリス、及び連邦王国の女王であるエリザベス二世が日本に訪れた際に新幹線に乗り「新幹線は時計より正確」という発言をしたが、その内容がよくわかる所でもある。

第2章「新幹線運転士という仕事」
新幹線運転士の仕事は単純に新幹線を運転するだけではない。もちろん「新幹線を運転する」と一口に言ってもドアの開閉や車庫への出庫・入庫など多岐にわたる。運転業務の他にも、「車掌」や「点検」などがあり、ほぼ1人で新幹線のあらゆる業務をこなさなければならないという。

第3章「運転席から見える風景」
新幹線に限らず、あらゆる電車が好きな人であれば、本章ほどワクワクするような所はないのかもしれない。その大きな理由として、普段は見ることのできない運転席、そしてそこから見える風景を見ることができるからである。
しかし運転士は新幹線から見える風景を楽しむ暇はない。いつも見ているのは「終点まで運ぶこと」と「鉄道の未来」である。

第4章「お客様の知らない新幹線」
「ドクターイエロー」と呼ばれる新幹線が存在する。ちなみに私はこの存在を本書に出会うまで知らなかった。ちなみに「ドクターイエロー」とは正式に言うと「新幹線電気軌道総合試験車」のことを表し、車体が黄色であることから名付けられた。どのような新幹線かというと、路線の安全性などを点検するために定期的に運転する車両である。
新幹線を「安全」に運転するために、線路や新幹線そのものの点検、さらには災害時のシミュレーションなどを行っており、先の東日本大震災でも大いに役立てられた。

第5章「新幹線運転士への道程」
とある新幹線運転士の生い立ちをもとに、新幹線運転士になるためにはどのような道を辿っていけば良いのかについて取り上げている。

1960年から誕生した新幹線は50年以上の歴史を経て今でも親しまれ続けている。その親しまれ続けている方々の中には新幹線をいつも利用している人も少なくない。その新幹線は調べてみると私たちの知らない顔まで存在する。その「知らない顔」を知ることのできる一冊であり、本書を読むと新幹線の見える風景が変わるのかもしれない。