独立取締役の基礎知識

日本の企業には「取締役」と呼ばれる役職がある。これは「会社法」のなかで株式会社を設立する際に「取締役会」を持つことが義務付けられており、そのなかで代表取締役、および取締役の選定を選ばなければならない。ただし1人で会社を設立する際は代表取締役1人だけであるが。

その「取締役」は会社に所属するものと、「社外取締役」と呼ばれる社外の人間から取締役として招聘することもある。

本書は「独立取締役」というものを紹介しているのだが、現在における「会社法」のなかで「独立取締役」が義務化されておらず、企業の任意によって設置することができるという。その「独立取締役」の位置付けと役割などについて紹介し、その重要性を説いている。

第1章「独立取締役に求められる役割」
「独立取締役」とはいったいどのような存在なのだろうか。調べてみると。

「企業からの独立性が高い取締役のこと。独立性のある取締役としては既に「社外取締役」が一般的になっている。」「コトバンク」より一部抜粋)

とある。つまり、会社内の生え抜きではないところから取締役に就任しているため、企業のしがらみに絡むことなく、「第三者」という立場から企業の問題点や現状を指摘、かつ改善をすることができる存在である。
もっと言うと、社会的な立場における企業として価値を産み出すために「独立取締役」を設ける企業もある。

第2章「独立取締役の法的位置付け」
取締役の中で「社外取締役」の存在もあるのだが、それが「会社法」によって義務付けられている会社もある。その会社は証券取引所で上場をしている会社である。
この社外取締役についての法的位置付けについて、株主代表訴訟の判例を中心に考察を行っている。

第3章「独立取締役を守る先進的なD&O保険」
「D&O保険」は直訳すると「会社役員賠償責任保険」とある。会社役員である以上様々な責任はとって回る。その責任を通じて「裁判」にかけられ、賠償される。その賠償や裁判は時として無一文になったり、社会的に抹殺されたりすることさえある。その保険として「D&O保険」がある。その「D&O保険」は日本ではあまり知られておらず、独立取締役が設けられている企業の一部しかない。

第4章「独立取締役の職務と会計リテラシー」
独立取締役としての役割とは少し離れるものの、職務の中でも必要なスキルとして「会計リテラシー」を取り上げている。
取締役会だけではなく、株主総会、もっと言うとM&Aといった業務も役立つ。

第5章「独立取締役と企業不正リスク管理」
独立取締役は社外の立場から様々な職務を行いつつ、監督を行うことが求められる。そのため企業不正における責任も社内取締役と同様に企業不正に対するリスクや責任は存在する。本章ではそのリスク管理と独立取締役の役割についてを記していると共に、独立取締役へのエールを送っている。

第6章「体験から語る独立取締役の職務と責任」
本書は「日本取締役協会」といいう社団法人によって作られた一冊である。その会長はオリックスバファローズのオーナーと知られている宮内義彦氏である。
その日本取締役協会の会員には独立取締役として担った方もいる。本章ではその独立取締役を担ったことのある3人について「独立取締役」の役割についての体験談をシンポジウム形式にて綴っている。

本書に出会うまでは「独立取締役」の存在は知らなかった。もっと言うと会社法で位置付けられていないこともある。しかしこれから「独立取締役」の存在は知られるようになり、法律的にも位置付けが明確になってくることだろう。その先駆けが本書と言える。