シェフの哲学―食の探求から三つ星レストランの運営まで

「食」の世界は奥が深い。高級食材をふんだんに使った贅沢な料理から、100円にも満たないような料理でも味は千差万別とある。「食」にまつわる「味」の追求は料理人に限らず、様々な人が研究し、公の場で実践し続けている。

その「研究」と「美味」への追求は本書で紹介される「三つ星レストラン」のシェフも例外ではない。19歳から料理の世界に入り、現在は三つ星レストランのシェフとして、辣腕を振るう著者が自らの半生を振り返りながら「シェフ」とはどのような存在なのか、そして「食」とは何なのかを「追求」しまとめたものである。

1.「味覚修業の時代」
「味覚」を修行したのは19歳にシェフとして修行を始めた時ではない。生まれ育った頃から既に修行は始まったという。それは母親や祖母が作る料理に舌鼓をしている時から、「料理」だけではない様々な味があると言うことを知った。
「様々な味」は料理、料理の素材もあれば、食べている時の雰囲気も含まれる。
母や祖母が作る料理を味わうことで、家族団らんの雰囲気もあれば、肉や野菜などの素材の味の思い出も本章にて続けられている。

2.「頂上に向かって一歩ずつ」
19歳の時に料理の修業が始まったが、その修行の中でピザやデザート、魚料理などを紹介しながら、料理修行を行ったエピソードを紹介している。一人で料理店を構えるようになってからはミシュランで一つ星、二つ星と星がつけられ、たちまち人気店になっていった。

3.「グラン・ヴェフールの舞台裏」
「グラン・ヴェフール」というフランスの有名料理店で総料理長に就任したのは1991年、僅か2・3人とひっそりした料理店から、数十人のシェフを束ねる総料理長となり、厳格なヒエラルキーの現場に放り込まれたという。
その階級社会の中で彩られている料理と、仲間たちについて本章にて綴っている。

4.「想像力とレシピ」
シェフが料理を作るときは食材から選び、そこから想像力をはためかせて料理を作ると言われている。著者もそれに似たような事を言っているのだが、料理における想像力について、著者は「絵画」に見立てている。

本書は三つ星レストランの味に対する哲学だけではなく、厨房に対する考え方について代償問わず運営を行っていた立場としての独自の哲学がふんだんに盛り込まれている。それはビジネスや、そこから生まれる成果物にも通ずるモノがあるのかもしれない。