人口負荷社会

2008年を境に日本の人口は減少の一途を辿っている。少子高齢化が大きな要因であるが、人口減少と同時に人口にまつわる大きな問題が隠されている。
それは労働人口の減少と、労働者と高齢者との相関関係にある「人工負荷」の急速な増大がある。

人工負荷(本書では「人口オーナス」と言う。オーナスは「重荷・負担」という意味を持つ)は労働者1人あたりにまかなわれる非労働者、つまり「高齢者」や「学生」「未就

学児」などの人々の割合を表している。少子高齢化に伴い「非労働者」のうち「高齢者」はますます多くなることが予想される。
本書は「人工負荷」がますます上がってくる現状と、その状況への対策方法について考察と提言を行っている。

第一章「日本の人口構造はどう変化していくのか」
日本の人口変化には、3つの特徴がある。キーワードとしては「総数減少」「高齢化」「少子化」が挙げられる。3つの特徴が重なり合うことで人口が減少するだけではなく、労働者への負担が増大する原因にもなっている。

第二章「日本の出生率の真実」
人口減少の引き金として「少子化」が挙げられているが、その中でも「出生率」の現象もまた、取り上げられるメディアも少なくない。その「出生率」の現象がどのようなメカニズムがあるのか、そして「少子化」と「出生率」にはどのような関連性があるのか、本章にて分析を行っている。

第三章「日本の少子化の原因を考える」
その日本における少子化の原因もほんしょうにて取り上げているが、所得水準と関連性もあるのだという。本章では所得水準との関連性について分析を行っている。

第四章「人口オーナスとは何か」
本書のキーワードは「人口オーナス」である。「人口オーナス」という言葉自体は私たちの所でも聞き慣れないのだが、それもそのはずで、本章にて「人口オーナス」を日経テレコン21で調査すると過去30年で数件しかヒットしなかったという。
では、「人口オーナス」とは何か、調べてみると、

「一国の人口構成で、高齢人口が急増する一方、生産年齢人口が減少し、少子化で生産年齢人口の補充はできず、財政、経済成長の重荷となった状態。」「コトバンク」より)

という。これに対比した言葉として「人口ボーナス」が挙げられ、

「一国の人口構成で、子供と老人が少なく生産年齢人口が多い状態。豊富な労働力で高度の経済成長が可能。多産多死社会から少産少子社会へ変わる過程で現れる。」(こちらも「コトバンク」より)

とある。

第五章「少子化、人口減少はなぜ問題なのか」
「少子化」や「人口減少」がメディアで叫ばれているが、それらが問題だとする理由として「人口オーナス」が挙げられている。

第六章「人口オーナス下の経済成長」
「人口オーナス」の中で経済成長は影響していると言うが、本章ではその関係性について「国内貯蓄」を絡めて言及している。

第七章「大労働不足の時代へ」
人口オーナスが深刻になってくると、労働者の人口も減少してくることにあり、本章のタイトルにある「大労働不足」にもなりかねない。本章では労働不足への現状と対策について提示している。

第八章「高齢者と女性の就業率を高めるには」
大労働不足への対策への処方箋の一つとして「高齢者」と「女性」の社会進出が挙げられる。前者は定年の延長により、労働人口を確保する、後者は就職窓口を広げる、もしくはキャリア形成を促進させることによって労働人口の確保をしている。

第九章「人口オーナス下の産業・企業」
人口総数が減少することによって日本における企業や産業も縮小するだろうという論者も少なくない。しかし、著者はそれを錯覚だと言うが、本章ではその錯覚について3つに分けて論じている。

第十章「人口オーナス下の社会保障―年金問題を中心に」
「人口オーナス」の中で年金などの社会保障が大きな課題として上がってくる。本章ではサブタイトルにあるように、年金問題を中心にして社会保障の在り方を提言している。

第十一章「人口オーナスと民主主義の失敗」
「人口オーナス」になることによって民主主義の構造そのものが成り立たなくなるのだという。投票行動や経済活動に分けて民主主義が成り立たなくなった要因について分析を行っている。

第十二章「人口オーナス下の地域」
「人口オーナス」の状況下で首都圏を除く地域ではどのような状況にあるのだろうか。よく「地域格差」と言う言葉を耳にするのだが、ここでは「経済」というよりも、人口、それも「人口構造」における「人口オーナス」になった時の影響について分析している。

第十三章「アジアの人口ボーナスが剥落する日」
日本では「人口オーナス」の状態にあるのだが、中国などアジア各国では急激な人口増加に伴い「人口ボーナス」状態にあるのだという。しかし中国では、日本と同じような「人口オーナス」にシフトされており、これから各国も人口オーナスになり、アジアの台頭も退いていくと分析している。

第十四章「未来のためのコストを狙う」
人口オーナスの潮流はそう簡単に変えることはできない。その出来ない要因と「人口オーナス」の中で経済を活性化するための戦略について提言を行っている。

「人口オーナス」や「人口ボーナス」という言葉は新聞や雑誌などの既存メディアでは中々出てこない。そのため、「人口オーナス」と「人口ボーナス」について詳しく解説を行った。
難しい用語は出ているものの、労働人口の減少と、高齢者と労働者の割合が変わることによって現状の方法では通用しないことは紛れもない事実である。その状況を憂うことは簡単である。その状況からどう生かし、経済を発展させる事が大切である。生存原理と同じように「変化する」ものが生き残れるのだから。