「思考の老化」をどう防ぐか

「人は感情から老化する」と言う言葉を聞いたことがある。その感情を司るのが脳であり、脳は「思考」も行う。思考の老化は、脳の老化に直結し、やがて感情がなくなり、衰える。
思考そのものの老化は、生活習慣が単調、かつ同じパターンになると、その「老化」に気付くことがなかなかできない。気づかぬ老化を気づければ、老化を防止するためのものとしての第一歩となる。本書はその思考の老化のメカニズムと、その防止法について伝授している。

第一章「思考の老化を加速する「前頭葉の衰え」」
「思考」そのものを司る部分として「前頭葉」がある。その「前頭葉」はその名の通り、脳の中でも大脳の前半分にあるところを指している。
その「前頭葉」の成長や衰えは個人差が激しく、どの時期に衰えるかもわからない。本書ではだいたい40歳前後を目安としているが、それより遙か前に衰える人もいれば、いつまでたっても衰え知らずになる人もいる。
最近では成功体験に縛られる、固定観念にとらわれてしまう人たちも多くなり、前頭葉を使うような機会がとれず、前頭葉が老化してしまい、紋切り型の発言や考え方しかできなくなってしまう。

第二章「思考の老化―その典型的症状とは?」
「思考の老化」の典型としては「前例がない」ことをやらない人のことを指している。簡単に言えば「前例」を必死に踏襲しようとしている人のことを指している。
さらに「一つの答え」ばかりを求める、あるいは考え方まで同じようになるような日本人型の考え方や教育も前頭葉を衰えさせる要素の一つとして挙げられている。
「自殺」も社会問題として挙げられるのだが、そこにも「前頭葉」や「決めつけ」と言ったところに要因があるのだという。

第三章「思考の老化は、今からでも克服できる」
「思考の老化」に気付くことは、それを脱出するための第一歩と最初に書いたのだが、その大きな理由として、思考の老化は誰でも、何歳でも今から克服できるところにある。
それはこれまであった「伝統」や「常識」に疑いを持つ、ツッコミを入れる、不自由になる、と言ったことで「困る」「あわてる」よりも、この状況の中でどう乗り切るかを考え、実行することで、思考力が高くなる。

第四章「人生に大きな差が付く「前頭葉思考」」
新しい考え方を持つ、あるいは仮説を持つことで斬新なコンセプトを構築することができるのだが、そこから得た思考を「試行」する事によって使えるかどうかも「前頭葉」を鍛える上で重要な要素となる。要するに新しいことを思いついたら、すぐに実践し、失敗しながら前に進むことが大切であるという。

第五章「前頭葉が活性化する「脳にいい習慣」」
前頭葉を活性化させるためには、簡単に言えば前頭葉の老化を防ぐことにある。そして興味をもったこと、好奇心をかき立てために、好き嫌い問わず、様々なものに触れること、それを行っても「失敗」をおそれないことによって「前頭葉」は衰えるどころか、いくらでも成長をすることができる。

講談社現代新書で「思考停止社会」と言うのを以前取り上げたことがあるのだが、日本人、あるいは日本そのものが過去にあるたった一つの「正解」を追い求めがちになってしまう傾向にある。「前例がない」「未知の領域」と言うものに後込みしてしまい、過去に事例のあるものをそのまま実践しようとする傾向にある。そうではなく、新しいことを考えたこと、得たことをそのままにせず、「とりあえずやってみる」ことが自分の考え方に広がりを持たせる、あるいは成長することが「思考の老化」を防ぐ大きな要素となる。