自立する国家へ!

本書を一目見たとき、我が目を疑った。
方や元・海上幕僚長であり「田母神論文」で更迭され、現在でも講演やテレビに引っ張りだことなとなった方で、憲法改正論者かつ核保有を主張している。

方や元・外務省官僚で、駐レバノン大使など多くの大使を担った方であり、2003年にイラク戦争反対を主張し、解雇された方で、こちらは護憲・核廃絶論者である。

簡単に言えば、右派と呼ばれる論者と左派と呼ばれる論者が共著で出ているのだが、お互いに共通しているところとして「対米従属」に関して反対している所にある。

思想が対立する論者が議論を通じて得た共通点と相違点、両方の点を通じて「日本」という国家はどの道を歩くべきなのかについて、本書では論じている。

第一部「今こそ自主・自立した日本を取り戻す時である」
第一部では、元・外務省官僚の天木氏の議論である。
そもそも日米安保条約は役割を終えたと主張している。また日米安保条約を締結する際も保守層が反対すべきであるのだという。当時60年安保を反対した論客は右派・左派問わずいるため、左派だけが反対していたとは限らない。
しかし、この「対米従属」を行うことを決めた「日米安保条約」によって良く言えばアメリカ軍の傘に守られたと言えるのだが、悪く言うと、日本は自衛隊を持ちながら憲法による縛りがあるため、単独で何もすることができなかったという。

第二部「日本は国力と軍事力を備えた独立国家たれ!」
第二部では田母神氏の議論に移る。
大東亜戦争、そして戦後以降の約70年という長い歴史に渡って日本はアメリカの影が存在した。「日米同盟」がある、と言えば響きは良いのだが、経済政策などにしても「年次改革要望書」がアメリカから送られ、要望どおりの改革を要求してくる。日本は同名というのは名ばかりで「従属」にあるのではないのか、と言うのが天木氏と同じ考えにある。
自衛隊の立場からして、専守防衛や後方支援の立場にいるのだが、日本国憲法上、敵を攻撃することができないなど様々な制約がある。日本が独立して「防衛」できる体制を作るために、日本が自立できるためには憲法の改正は不可欠であると指摘している。

第三部「激論! 最強の自主防衛とは?」
天木氏と田母神氏の対談であるが、元々「憲法」「対中政策」「歴史認識」で正反対の意見である。これは本書に限ったことでは無く、討論番組などで激論を交わしてきているので本書では割愛する。最初にも書いたのだが、共通している所は「対米従属」に対して疑いを持ち、変えるべきであり、日本が自主防衛をもつこと、かつ本当の意味で「独立」をする必要がある。

かつて「右であれ左であれ、わが祖国日本」という本が出たように、右派であっても、左派であってもわかり合える点は存在する。本書は「対米従属」と言う点が共通項にあったのだが、他にも右にも左にも共通できる所はある。思想は分かれても共通するところはあるし、ともに日本を栄えていきたい、という気持ちは同じである。