ホームレス博士~派遣村・ブラック企業化する大学院

今となっては「大学全入時代」となっており、誰でも大学に入学する事ができる様になった。大学ばかりではない。大学院も門戸が広がりを見せるようになり、修士・博士号をもらう人も増えてきている。その方々はさらなる研究を求め、研究機関・大学・企業に進むのかと思ったら、専攻していたものとは全く関係ない仕事に就く、あるいは仕事が無い状態にある博士も存在する現状がある。それらのことを「ホームレス博士」と呼んでいる。その「ホームレス博士」の現状とこれからについてを本書にて取り上げている。

第一部「派遣村・ブラック企業化する大学院」
「貧困層」はかつて、満足に勉学ができず、それでいてジリ貧の仕事しかできなかった人のことを指していたが、最初にも書いたのだが、最近では博士号を持っている人でも「貧困」に喘ぐ人は少なくない。本章では博士号を持っていることを隠し「高卒」と偽って働いているものの満足に生活をする事ができない。その中には文字通り「ホームレス」になってしまった人もおり、社会問題化している。
しかも高学歴であることを周りに話すことができない、それは「高学歴はエリートが当たり前」というような先入観が未だに残っている現状がある。
その原因の一つとして制度の朝令暮改が挙げられている。有名どころでは法科大学院が挙げられる。法科大学院の設立当時は司法試験の合格率が7割前後と触れ込んでいたが、実際には4割前後だった。さらに言うと合格しても弁護士としての仕事に付くことができず、ホームレス弁護士と呼ばれる様な人も存在する。
さらに大学の現場でも専任教員のピラミッド構造の変化、さらに非正規教員の現状について悲痛な叫びを本章では取り上げている。

第二部「希望を捨て、「しぶとく」生きるには」
大学院に行き、修士・博士号を得る人は数多くいるのだが、修士・博士号を取得できたからと言って今となっては大学教員になる可能性は低い。たとえ教員になったからと言っても将来が保証されない「非正規教員」という扱いを受けることが多い。
ましてや専攻していた学問を捨てて、アルバイト生活やパチプロになった人もいる。
著者のように博士号でありながら僧侶になった人もいる。
その時代の中で求められていること。それは「何のために大学に入るのか」「何のために修士・博士号を取るのか」を常々考えることにある。

高学歴社会となった今だが、ワーキングプアの人もいれば、ホームレスになった人もいる。高学歴だからと言って「エリートである」と言う時代はもう通用しなくなったのだが、それでも「高学歴はエリートである」という固定観念は拭えていない現状にある。偏見と現実の狭間で板挟みになっている方々をこれからどうあるべきか。それは制度そのものを変えると言うのもあるのだが、それ以上に現状を広く訴える、と言うことが大切であると言うことを本書を読んで思い知らされた。