ショットバー

「ショットバー」は簡単に言うと、グラス1杯ずつ提供するバー(酒場)の事を表しており、カタカナ語ではあるが「和製英語」として用いられる。

本書の主人公はある商社に勤めているOLで、バリバリのキャリアウーマンと言いたいところだが、顧客のクレームに辟易し、不満をぶつけたくなる毎日だが、彼氏もいて、そろそろ結婚も考えていた。デートをする前に時間ができてしまって、とあるショットバーに立ち寄った。

ふらっと立ち寄ったショットバーで偶然の出会いをする。その出会いが後にとんでもない殺人事件に巻き込まれることになった。事件は警察、さらには国家にまで範囲は広がり、主人公は翻弄されていく。主人公は「ただ立ち寄っただけ」という感覚しか知らずに。

ショットバーに立ち寄った後は何気ない毎日を送っていたのだが、とある好機が訪れる。しかし事件の魔の手はどんどんと主人公に伸びていった。

ふらっと立ち寄った「偶然」が、あたかも「大風呂敷」のように広がっていき、主人公の女性が翻弄されていく。現実のように見えながらも「非現実」となり、両方の空間のジレンマに苛まれながら、そして巻き込まれていく先に何が待っているのか、さらに警察・国家・犯人の裏にある思惑と駆け引きが物語を面白くさせる。
たった一つの行動だけでどこまで膨らんでいくのか、と言うところが面白味のある一冊だった。