やらなきゃゼロ!――財政破綻した夕張を元気にする全国最年少市長の挑戦

かつては炭鉱で、夕張メロンで、映画祭で賑わせた夕張市は2007年3月に財政破綻をきたし、現在、財政再建に向けて動いている。

本書は元々東京都職員で夕張に派遣され、後に夕張行政参与になり、2011年に全国最年少で夕張市長になった鈴木直道氏が夕張との出会い、そして夕張を財政再建に向けて邁進したエピソードとこれからのことについて綴っている。

<30歳。全国最年少市長誕生!>
夕張市長になるまでは東京都職員として働いていた。それから夕張に派遣され、夕張の現実を目の当たりにし、2010年末に夕張市長に立候補し、初当選した。その立候補時に当時の東京都知事であった石原慎太郎(現:衆議院議員・日本維新の会共同代表)に、

「お前はとんでもない勘違い野郎だな!」(p.2より)

と罵られ、応援された。しかしこの「勘違い」と言う言葉は石原氏なりの「激励」であり、選挙に対してのアドバイスも惜しまなかったという。
選挙活動のなかで多くの困難はあった。しかし東京都職員として夕張に派遣されたとき、つながった人びとの支持と支え、そして鈴木氏の努力が多くの困難を乗り越え、初当選に結びついた。

<夕張との出会い>
著者と夕張との出会いは2008年に東京都職員として財政再建中の夕張市に派遣されたときのことだった。それまでの鈴木氏の人生は「負け組」と言うべきか、それとも、「波瀾万丈」と呼ぶべきか、少なくとも一般的に言われる「平凡」な人生とはほど遠いものだったことは間違いない。そのような人生のなかで高校生では生徒会長をつとめ、大学に進学をしようとしたが、生活環境の関係で東京都に働くことになったという。そこから夕張市に派遣されたのだが、財政再建団体になっていたことで苦しい状態になる事はわかっていたが想像以上だったことに驚いた。しかし鈴木氏はそこから奮起し、夕張市に住む人びととのつながりも持つ様になった。

<財政破綻した夕張の現実>
元々夕張は「炭鉱の町」として栄え一時期は約12万人もの人口を持つ都市だったのだが、炭鉱の需要が急速に衰退し、多くの炭鉱が閉山、後に様々なテーマパークなどの施設を乱立したのだが、衰退や財政の圧迫に拍車をかけた。そのことが膨れ上がり、2007年全国の市町村としては初めて「財政再建団体」となり、今年の6月には人口が1万人を割りこんだ。財政再建計画には「毎年26億円」の額を返済すべく、市民や市職員全員に負担を行いながらも、最低限の行政サービスしかできない苦しさがあった。

<若きチャレンジャー>
それでも鈴木氏は前を向いている。守ってばかりでは何も変わらない、立ち上がることもできない、そして何より、夕張市そのものが元気にならないことを知っているからである。そのため、夕張市長になってから市長自ら動き、国内外問わず夕張をPRしてきた。また東日本大震災の復興支援事業も積極的に進めていった。その一方で市民に負担をしなければならないこともあったのだが、様々な形で説得した。

夕張市は変わりつつある。新しい市長を迎えて2年半の月日が流れ、夕張は財政再建、そして復活のために今日もまた動き続けている。そう、本書のタイトルにあるように。

「やらなきゃゼロ!」

と。