言語の社会心理学 – 伝えたいことは伝わるのか

「言葉」というのは実に不思議なものである。その理由として挙げられるのは、言葉は文字通り伝えられるものもあれば、人によっては曲解して伝わるものもあれば、全く伝わらないものもある。

そう考えると、言葉は本当に「伝わるもの」なのかわからなくなってしまう。ましてや日本には「以心伝心」や「阿吽(あうん)の呼吸」という言葉があり、言葉を使わなくても「伝わる」ということもある。

本書は「言葉」についてどのような存在なのか、「社会心理学」という学問から考察を行っている。

第1章「「文字どおり」には伝わらない」
本章のタイトルにある「伝わらない」要因とは何か。会話と言っても言葉だけで伝わるだけではない。なぜかというと、言葉以外にも表情やボディランゲージなど「非言語」と呼ばれるコミュニケーションもある。さらに言うと「言語」と呼ばれる会話の中にも、「言い間違い」「異口同音」と呼ばれるような誤解も起こり得る。

第2章「しゃべっていないのになぜ伝わるのか」
第1章でも少し書いたのだが、全くしゃべっていないのに「表情」や「ボディランゲージ」で伝わることがある。
あるいは言葉の途中で理解できる、または言い間違いをしたのに正しく理解されることもある。それは「聞き手の推測」もあれば、両者が持っている「認識」という基盤がある。「推測」や「認識」という難しい単語が出てくるのだが、簡単に言えば「思いこみ」がある。

第3章「相手に気を配る」
「気を配る」ことの「伝わる」コミュニケーションについて、「相手」や「自分」について、2章に分割して紹介している。本章では「相手」にスポットを当てている。
相手に対して言う言葉としては「敬語」もあれば、「人の呼び方」まである。呼び方一つで、相手が良い気分になったり、気分を概して攻撃的になったりする事がある。特に「敬語」にしても相手に敬うか、自分がへりくだるか、場合によって使い方も変わってくる。いわゆる「尊敬語」「謙譲語」「丁寧語」の使い分けが挙げられる。その敬語の使われ方によって、相手の受け止め方も変わってくるのだが、本章では様々な立場(職業など)から考察を行っている。

第4章「自分に気を配る」
本章のタイトルにある「自分に気を配る」は、自分自身もあまりピンとこないのだが、簡単に言うと「自分をさらけ出すことができるか」という「自己開示」や自分が前にでる「自己宣伝」「自己呈示」について表している。簡単に言えば「自己アピール」の仕方によって相手はどのように受け止められているのかを考察している。

第5章「対人関係の裏側―攻撃、皮肉」
対人のコミュニケーションの中では、言葉が乱暴になることもしばしばある。それは話す相手が年下であったり、立場が同等かそれよりも下であったりするような場合に起こる。その「乱暴になる」というのは、タメ口はもちろんのこと、罵詈雑言を言うのも一つである。
罵詈雑言には色々ある。差別用語はもちろんのこと、相手の弱みを過剰に言う、内容の弱点を突くといったことが挙げられる。

第6章「伝えたいことは伝わるのか」
コミュニケーションは別に会話だけで成り立つわけではない。メールにしても、手紙にしても、やりとりがあればれっきとした「コミュニケーション」である。そのコミュニケーションが時として、思わぬ齟齬を生み出したり、誤解を生じたりすることが往々にして起こる。本章では「齟齬」や「誤解」について様々なケースをもって考察している。

コミュニケーションはどのような手段であれ「人」と「人」とのやりとりである。その人の考え方、あるいは受け止め方一つで話が進んだり、ぎゃくに思わぬ誤解を生み出したりする事がある。いわゆる「ミス・コミュニケーション」を防ぐためにはどうすればよいのか。一言で言うと、相手の考え方や価値観を理解しつつ、やりとりを行うことが大切である。