ネットが隆盛し、YouTubeなどの動画共有サイト、さらにはブログやSNSなど個人で発信できるサイトが色々と出てきている。色々投稿できる、表現できるのだが、そこには必ずといってもいいほど「著作権」が議論の的になる。
この「著作権」について、ネットの自由と著作権はいつも議論になるのだが、昨今行われているTPP(Trans-Pacific Partnership:環太平洋戦略的経済連携協定)の交渉が大詰めになっている今、その議論は白熱化している。その理由には、米国政府のTPP知財文書があり、それをめぐって日本や米国、EU各国と激しい対立を起こしているのだという。本書はTPP交渉をめぐって、著作権はどのように変わっていくのか、そして著作権を巡った存在とはいったい何なのかを追っている。
第1章「SOPAの息子たち」
「SOPA」とはいったい何なのか。簡単に言うと「オンライン海賊行為防止法(Stop Online Piracy Act)」と呼ばれており、2012年に米国で成立した。しかし法案の審議で、議員のみ鳴らず、ハリウッドの映画会社、ネット企業、ネットユーザーなどを巻き込んだ激しい対立が起こった。特にネット企業は「SOPA Black Out Day」と呼ばれる、抗議の意志を示した。
その中で、TPP交渉で議論される知財文書が全世界に流出された。本書の巻末には流出した文書の抄訳版が掲載されている。
第2章「TPPの米国知財条項を検証する」
流出した「知財文書」にはいったいどのようなものが書かれていたのだろうか。そこには「著作権保護期間の延長」や「非親告罪化」、「プロバイダー責任条項」、「商標権」など細かいところで権利の拡大、さらには規制・罰則の強化が挙げられる。
第3章「最適の知財バランスを求めて」
ネットと著作権をいかにしてバランスをとるべきか、その着地点はほとんど見えていない。ルールづくりも絶えず変化しているのだが、ネットの進化がめざましく、ついていけていない状況にある。
ふと思うのだが、アメリカに知財文書が流出して、なぜ日本の著作権法などに影響を受けるのか、それにはアメリカの思惑がある。というのはGoogleなど日本人でもよく使われるネット・IT企業の本社はアメリカで、世界中で展開するためには国々の法律に従う必要がある。しかしアメリカ政府から各国に法律を会わせるようにすると、アメリカから世界的な企業展開が容易になるのだという。
第4章「情報と知財のルールを作るのは誰なのか」
著作権法は絶えず改正されるのだが、そもそも過剰に違法化している者もあれば、「機能不全」に陥っている条項もある。しかし著作権法の改正をめぐって、諸外国の思惑もあれば、「著作権族」とよばれる族議員の存在もいる。その著作権改正を巡り、世界中で「海賊党」と呼ばれる所もあり、表だって活動している所もある。
著作権改正は今でも議論の的になっている。それだけではなくTPPの交渉も大詰めにさしかかっているが、日本が押されている印象も捨てきれない。著作権法そのものがどのような方向に行くのか、私たちは関心を向ける必要がある。そのきっかけとなる一冊である。
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