時は3.11後の脱原発運動が盛んに行われる、俗に言う「原発クライシス」と呼ばれていた日。脱原発を掲げながらも新エネルギーに対する模索が行われていた。
その中で注目されたのが「潮流発電」と呼ばれる発電システムだが、主に海流を利用する発電のことであるという。現実には「潮力発電」というのが鳴門海峡や津軽海峡、関門海峡などで実験段階であるが、稼働している状態だという。実用化のめどは立っていない。
本書の話に移るのだが、本書は潮流発電の研究者が資金難に自殺した彼女の復讐を果たすために、新エネルギーとして取り上げられた「潮流発電」を巡った殺人ミステリー作品である。
発電所を舞台にしていること、及び3.11以降の脱原発・新エネルギーの潮流を活かしつつ、殺人事件と、数々のトリックをちりばめている。そのトリック、もといミステリーの範囲は発電所から国にまで及ぶほどスケールが大きく、壮大感こそはないものの次から次へと浮き出る謎が生まれ、読めば読むほど考えさせられる一冊だった。
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