都知事―権力と都政

先日12月24日に東京都知事の猪瀬直樹氏が徳洲会グループからの資金提供問題の隕石に伴い辞任した。それにより、東京都知事選が来年の2月に行われる事になったのだが、東京都知事とは他の道府県とは異なる権力を持っているとも言われている。1300万にも及ぶ人口と財力、権力を持っているとされる都知事はいったいどのような役割を担ってきたのか、そして東京都を支える都議会、さらには都庁官僚とはいったいどのような存在なのか、本書は都知事選前の傾向と対策として東京都知事とは何かを紐解く。

第1章「都知事とは何か」
元々知事は明治時代における廃藩置県によって初めてその役職がついた。その時は府知事や県知事と言われた。なお、北海道は北海道庁長官、当時の東京は東京府であった。当時知事を選ぶには中央が決める、いわゆる「官選」によって決められていた。公選制になったのは戦後になってからのことである。
東京都知事と名付けられたのも公選制に移行してからのことであるが、基本的に地方行政と何ら変わらないが、日本の首都を預かっているだけあり、権限は強いという、その理由には、

1.都知事は全国有権者の1割に及ぶ1000万有権者の手で直接選ばれる
2.都の予算規模は韓国の国家予算並みの12兆円、職員数17万人と飛び抜けて多い(p.8より一部抜粋)

とある。

第2章「都知事と都政―戦後60年の軌跡」
戦後東京都知事となったのは先日辞任した猪瀬氏を含めて7人。それぞれの知事は日本の情勢を元に東京をどのように変えていったのかそのことについて取り上げている。

第3章「都議会―真の立法機関へ」
知事が様々な政治思想や構想を主張し、形作っていても議会を通さなくては成り立たない。その議会は日本の国会の縮小版と揶揄されており、政党に属する議員が都議会議員になっている人も少なくない、というか現時点で無所属の人は127人中わずか1人しかいない。特に石原都政の時代は「オール与党体制」と言われるほどの状態となり各方面から非難を浴びた温床でもある。

第4章「都庁官僚―「20万人体制」の現在」
今は「17万人体制」と言われている都庁官僚だが、かつてはもっと多く「20万人体制」と言われていた。しかし国は「官僚」と呼ばれているものの、自治体は「官僚」という言葉に否定的な人が多いのだという。

第5章「都知事と政策決定」
東京の権力の中心にあるのが都知事であるが、都知事の考える政策は都知事のみで決まるわけではない。政策を決めるに当たって、都知事はもちろんのこと、議会、さらには都職員(都庁官僚)を巻き込んで政策を立案・実行し、そして評価を行う、と言った事の繰り返しである。

第6章「都財政―常態化する危機」
東京都の財政は第1章でも書いたとおり10兆円規模であるが、その半分は都債によるものである。それ故か財政危機が毎年の様に叫ばれている。しかし石原都政が始まったときにはその会計に関する改革を行い、実績を積んだのだが、今となっては見る影もないような状況にある。

第7章「独自の大都市制度―都と特別区の関係」
大都市制度の一つとして挙げられるのが「東京23区」と呼ばれる「特別区」の存在である。戦前は「東京市」と呼ばれるものだったが、戦中である1943年に国家管理下に移行された。

第8章「石原都政の大都市経営―転換を試みた12年」
昨年末から12月24日までは猪瀬都政だったが、それ以前は12年もの間、石原慎太郎が東京都制を担っていた。この12年間で石原都政は何をしたのか、12年間の中で行われてきたのかを検証している。

来年2月に新しい東京都知事が誕生する。その際にどの知事を選ぶべきか、その知事の人間性を知る必要は確かにある。しかし、もっと知る必要があるのは今まで東京都はどのように変化をして行ったのか、そしてこれからの東京はどうなっていけば良いのか、2020年に東京オリンピックも控えているのだが、それを含めて都民は考える必要があるのでは無いか、と本書を読んで思った。