武器としての決断思考

ビジネスの場は幾度となく「決断」の連続と言える。その「決断」は様々な要素を考え、結論を導き出すという「意思決定」の方法があり、著者は大学にて教えている。その「決断」はどのような考えでもって行うのだろうか、そして決断に向けての議論をどのように組み立て、答え(最適解)を導き出すのか、その考え方を本書では伝授している。

1時間目「「議論」はなんのためにあるのか?」
「ビジネス」においても、「学術」においても「議論」は存在する。その「議論」には、最初にも書いたのだが学校の授業とは違い、確実な「正解」は存在しない。そのかわり議論を通じて「最適解」を導き出すことができる。その「議論」というと、「朝まで生テレビ!(以下:朝生)」などで罵詈雑言を交わしながら主張で戦うような事を連想する人も多いのだが、著者にいわせればそのような議論は「ダメな議論の典型」と切り捨てている。確かに建設的ではなく、「平行線」の議論の中をたどっているだけであり、しかもテーマも漠然としていて、変に拡散するようなことも起こる。
そもそも「議論」は具体的なテーマも設け、制限時間の中で相手を説得するといったことを行う。話し手は根拠や議論内容を入念に準備し、相手を説得するような事を行う。
そう「議論」は「最適解」という名の結論を生み出し、正しい方向に決断をする確固たる材料をつくるための要素でしかない。

2時間目「漠然とした問題を「具体的に」考える」
しかし「テーマ」は判断をしなければならないものによって漠然としたものになってしまうこともある。しかし最初にも書いたとおり議論にならないため、テーマを具体化する、あるいは二者択一にすることによって、結論が出やすい形にする事が大切である。「やるか、やらないか」という二項対立は非常にわかりやすく、議論をする人も準備がしやすい。
早く決断をしなければならないビジネスの場では、こういったことは必要であるが、これについては所によってデメリットになるリスクも存在する。また思考停止の温床になると仲正昌樹氏の「「分かりやすさ」の罠―アイロニカルな批評宣言」という本で取り上げられている。

3時間目「どんなときも「メリット」と「デメリット」を比較する」
主張をする際はメリットだけ、あるいはデメリットだけ出てしまうのだが、それでは第三者が判断するような材料が無いに等しい。議論を組み立てて行く中で、重要な要素として「メリット」「デメリット」双方を提示することによって、比較を行い、制限時間内に、かつ合理的に最適解を生み出すことができる。しかし「メリット」「デメリット」を出すにもいくつかの条件が存在し、そのすべてを満たさなくてはならない。本章では双方の「条件」とはいったい何なのか、それについて実践例をもとに取り上げている。

4時間目「反論は、「深く考える」ために必要なもの」
議論に必要な要素として必要なのが「反論」である。その「反論」のとらえ方を間違ってしまうと、「朝生」の議論よろしく、平行線であり、かつ不毛な議論になり、いたずらに時間を過ぎてしまう。反論をするにも頭ごなしに否定せず、「論理」をもって突っ込みを入れることが必要である。「反論」も立派な判断材料となるので、頭ごなしの否定ではなく、むしろ判断できるような反論、というより「反証」と言った方がいいのかもしれない。「証」拠となる議論になるのだから。

5時間目「議論における「正しさ」とは何か」
根拠を確固たるものとするには、いかなる反論にさらされていてもぶれることはない。そのため「根拠」をしっかり持つ、得ることは何よりも大切なことである。本章ではその「根拠」を持つこと、そしてその根拠の「逆(反論)を取ること」、そして推論を検証することについて取り上げている。
しかし「正しい議論」は世の中にあるのだろうか、という疑問を持っている。それは制限時間内に結論を出さなければならない議論であれば、本書のようなものは必要であるが、あくまで結論のない議論が必要になるようなこともある(学術的な議論、人生の議論など)。その場合に「正しい議論」はあるのだろうか。

6時間目「武器としての「情報収集術」」
議論をするためには「論理」が必要である。その「論理」を導くためには「証拠」「事実」は無くてはならない。それがない、推測のようなところで「論理」を述べている人もいるのだが、それは「論理」のにべにもならない。その証拠となるのが形のある・ない含めて「情報」なのだが、その情報はインターネットの隆盛により濁流のごとく情報が流れているのだが、玉石混淆であるため、鵜呑みにしてはいけない。「それが価値のある情報なのか」というものを自分の頭と足を駆使する必要がある。

7時間目「「決断する」ということ」
そして本書のタイトルである「決断」である。議論にケリをつけるための基準とはいったい何なのか、全体的にどのような判断をしていくのか、そのことについて取り上げている。

学校のテストには「正解」は存在するものの、社会人になると、「正解」のないような問いが色々と出てくる。世の中のあらゆる事象には「正解」というのが存在しない。しかし、最適解はいくらでもある。その最適解を決定づけるために「議論」があり、「決断」が存在する。本書はあくまで「ビジネス」のための「決断思考」であり「議論のあり方」であることを忘れてはならない。