憂国論―新パトリオティズムの展開

本書の著者である木村光浩氏は新右翼団体である「一水会」の代表であり、昨今疑惑としてあげられている「徳洲会事件」で猪瀬直樹前東京都知事と、医療法人徳洲会グループ創設者の徳田虎雄とで行われた資金提供を行う場を作ったフィクサーとして言われている。

それはさておき、元々新右翼団体として、様々な運動や論戦を行ったことで話題となったのだが、本書はその原点となる国としてのあり方、最近お話題となっている安倍政権と「集団的自衛権」、民族問題や憲法問題、さらにはイラク戦争や靖国神社に至るまで、これまで培ってきた著者の思想を語り尽くしている。

1.「安倍内閣と集団的自衛権、そして沖縄」
本書における安倍内閣は1年程で頓挫してしまった「第一次安倍内閣」のことを指している。短い期間で合ったものの教育基本法に初めてメスを入れたことで評価されているが、他にも集団的自衛権や「戦後レジームからの脱却」といったものも取り上げられた。

2.「イラク戦争」
「イラク戦争」は「イラクには大量破壊兵器がある」という疑いの中で行われた。その真相は石油か、それとも脅威の除去なのかは定かになっていないのだが、著者もまたイラク戦争には反対の姿勢だった。
本章ではその理由の他に、日米関係のあり方について議論をしている。

3.「グローバリズムと民族問題」
日本には民族問題は無い、と言う風な論調も目立つが、大和民族やアイヌ民族、琉球民族など様々な民族が住んでいるため、日本民族の一括りにするのは難しい。また最近では朝鮮総連に関する話もあり、さらには昨年・一昨年にはヘイトスピーチがある。「民族問題」は日本にも密接な問題である。

4.「サンフランシスコ講和条約と憲法問題」
昨年の春から夏にかけて憲法改正(特に96条改正)について議論が白熱化した。そもそも日本国憲法は日本が手直しをしたとはいえ、大方はGHQによって作られたと言われている。さらにいうと1952年に締結したサンフランシスコ講和条約で、憲法を改正できるチャンスはいくらかあったのだが、それを放置し、経済成長をしている間に改正論議すら蔑ろにされてしまい、今に至っている。

5.「近代の超克と戦後精神の形成」
日本における近代主義には戦前・戦中に唱えられた「アジア主義」が挙げられる。戦前のアジア主義はどのような物で、大東亜戦争などの戦争を通じて「戦後精神」に切り替わっていったのか、そのことについて取り上げている。

6.「ザイン・ゾルレンの天皇と皇室典範改正問題」
かつて、戦前と戦後間もない時には公の場で天皇について語ることはタブーとされていた。現在でも皇室典範をはじめとした天皇論に関しては、在京キー局を中心にタブー視している所が多い。
本章では天皇のザイン(存在)と、天皇之行うゾルレン(行為)と共に皇室典範の改正、さらには天皇家の未来はどうあるべきかを説いている。

7.「靖国神社をめぐって」
靖国神社と言えば、昨年の12月末に首相が参拝したことにより、中韓はもちろんのこと米国でも批判の声が上がった。そもそも靖国神社に対して中韓が騒いでいる理由、さらにA級戦犯が合祀された理由と考えについて著者自身の見解を述べている。

日本には様々な問題が横たわっている。中には日本の国家として看過できないようなものまである。その状態の中で私たちはどのように考えていけば良いのか、憂国の論客がそれを投げかけている。

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