ウェルチ、ガースナー、ベスーンに学ぶ 「企業変革」入門

著者の鈴木様より献本御礼。
日本における企業、及びビジネスには「変革」が必要になっている時代である。しかしそのことに気づきながらも正しく実行されているケースは少数である。ましてや大企業は大きな組織体であるだけに意思決定も遅くなってしまうため、どうしても変革しようにもできないと言うような状態に陥っている。

それはさておき、経済大国であるアメリカではメジャーな企業で大きな「変革」をもたらし、凋落の憂き目に遭った状態から這い上がり、復活していった。本書はGE・IBM・コンチネンタル航空の3つの事例をもとに、凋落と向き合い、変革し、成長をもたらしていけば良いのかを示している。

第1章「凋落という現実に向き合えているか」
物事には原因があって結果がある。その結果がポジティブなものでも、ネガティブなものでも、である。
もっと言うと、平家物語に、

「祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり 沙羅双樹の花の色 盛者必衰の理を表す」

とある。特に最後の部分が該当するもので、必ず衰える状態が来る。それは大企業でも例外では無い。
本書で紹介される3企業は創業から大企業になるまで成長したが、その後不振に陥り倒産寸前にまで行くところもあった。その原因もそれぞれ異なっている。

第2章「未来のマーケットを創出してきたか」
凋落傾向に陥ったところからどのように立て直すか、まずは「志向」を変える必要があった。それは「社内」の志向から「顧客」志向であるが、それぞれ共通して、顧客志向をするにあたって、共通の3つのルートが存在した。

第3章「人を変革するスイッチはあるか」
企業を休息に変革するとなると、抵抗勢力になる人たちは必ず存在する。そのことによって変革をしようとなると骨抜きになってしまい「絵に描いた餅」になって失敗するケースも少なくない。その抵抗勢力と向き合いながら、いかにして改革していくのかプランや問題意識などを絡めて紹介している。

第4章「危機の芽はきちんと摘んでいるか」
改革をしていくと「危険な芽」というのはいくつかある。その「危険な芽」というのは「組織」の中にある。別に組織の中に危険人物がいる、と言うわけではなく、組織の意思決定や市場解釈がコミュニケーション論で言われる「リスキーシフト」などの「集団思考」に陥り、解釈の誤解を生み出し、失敗を起こす引き金になってしまう。それをどのようにして摘むのかを示している。

第5章「「成長」と「生き残り」戦略を両立させているか」
「成長」も「生き残り」も重要な要素である。しかしどちらか選べと言われると、それぞれ異なる。「卵が先か、鶏が先か」というように答えの出ない選択になるのかも知れない。
両方を両立した戦略を立てるにはどうしたら良いのか、その一つには「生産性への追求」と「付加価値の向上」が挙げられるが具体的には何か、そのことについて3社の実例を取り上げている。

第6章「「管理」ではなく「率いる」ことができているか」
人をまとめる、と言うことは「管理」ではなく「率いる」のだと言う。しかし多くの人は「管理」と答えてしまうのだが、実は「管理」となると、一人一人を目配りし、正しい方向に従わせているように見えてしまう。しかし「率いる」はリーダー自身が情熱を持ち、自然と部下達が付いていくという形である。本章では後者のことについて提示している。

第7章「「モノづくり」を超える企業文化を育てよう」
日本はモノづくり大国であるが、その先に行く必要がある。だからと言って「モノづくり」から脱却をする事ではなく、あくまで「超える」ため、その先にあるサービスや付加価値を外の世界に会わせて作り、変化させることが大切である。他にも後継者や後任選びも細心の注意を払う必要がある。

第8章「次なる「再生」への準備を始めているか」
赤字地獄から脱却するだけが全てでは無い。むしろ倒産を回避してから飛躍しなければ真の「再生」とは言えない。次なる再生には利益を殖やし、実績が再評価され、さらに後継者を次々と生み出す、そういった「サイクル」を作り、常に変化していく環境を作ることこそ「次なる再生」であり、その準備をする必要があるという。

ビジネスの世界は過酷である。過酷だからでこそ、「変化」が肝心である。しかしそれが分かっていても「実行」しなければ意味が無い。経営者でも行き詰まりを感じたら、もしくは個人でも行き詰まりを感じたら、本書の事例をもとに、変化をすることが大事である。本書は変化を知り、実践するための入門書である。