走れ!移動図書館~本でよりそう復興支援

皆様は「移動図書館」の存在をご存じだろうか。移動図書館とは、

「書籍などの資料と職員を載せた自動車や船などを利用して図書館を利用しにくい地域の人のために各地を巡回して図書館のサービスを提供する仕組み」Wikipediaより)

のことを言い、公立の図書館でも「自動車図書館」「自動車開架」と呼ばれている。私の故郷である旭川でもそういったものはあるのだが、本書は移動図書館の歴史よりも、むしろ東日本大震災の被害に遭った被災地における移動図書館の活動について取り上げている。

一章「なぜ移動図書館なのか」
本書の取り組みは「移動図書館プロジェクト」と呼ばれるボランティア活動の記録である。元々は被災地の支援などを行ってきたのだが、この震災を通じて初めて「移動図書館」と言う物を立ち上げたのだという。しかしプロジェクトを立ち上げるとするならば、本章のタイトルにあるとおり、なぜ「移動図書館」なのか、というのが異様に気になる。他にもがれきの片づけや衣食住の支援などがあるのではないか、という考えもあるのだが、取材を通じて「本を読みたい」という被災者の声によって作られた、他にも震災によって多くの図書館が被害に遭い、ほとんど本が読めない状態になっていたことも理由として挙げられる。

二障「読みたい本を読みたい人へ届けるために」
移動図書館は単純に本を持って移動するだけでは成り立たない。移動するための車も確保する必要があり、運行ルートやドライバーなど車や人などの計画も必要になってくる。また本の選び方も重要なものであり、単純に「積めるだけ積む」のでは意味が無い。何せ「図書館」なのだから。また「図書館」だからでこそ、本を貸し出すわけだから貸し出しの台帳も必要になってくる。
そういった諸々の準備と試行錯誤を繰り返して、「移動図書館」を作り上げていった。

三章「本を読むこと」
本は教養を得るばかりではない。本を通じて落ち着きを取り戻してくれるし、何よりも活字中毒の自分が言うのも難なのだが、ある種の薬にも、ビタミンにもなる。
本を通じて、落ち着きを取り戻した人もいれば、不安を取り除けた人、あるいは明るさを取り戻した人も少なくない。本はその可能性がある。

四章「本のチカラを信じて」
人間と同じように本にも無限の「チカラ」が存在することを私自身も信じている。著者も「本は「つなぐ」もの(p.194より)」と定義しており、その「つなぐ」は人もあれば、情報もある。

移動図書館がもたらした物、それは衣食住の充実の先にある心の充実なのかも知れない。震災で何もかもが失われ、今もなお「震災関連死」やトラウマなどに苛まれている人は後を絶たない。その時図書館をはじめとする「本」の存在は必要不可欠である。四章にも書いたとおり「本のチカラは『無限』」であることを信じる。それは復興支援のその先も同じである。