お線香の考現学―暮らしに根付くお線香の香り

今日は3月21日、春分の日である。その時期は「春のお彼岸」と呼ばれ、墓参りに行く方も多いことだろう。その時にお供え物の他にもお線香を用意するご家庭も多い。

さて、墓参りや仏壇に添える「お線香」にはどのような種類があり、どのように作られていくのか、分からない所もけっこうある。本書は私たちの暮らしにも密接している「お線香」のイロハについて取り上げて行く。

一章「「香」について」
「お線香」の話に入る前に「お線香」の中の「香」についてフォーカスしていく必要が亜ある。「香」と言えば、今ではアロマなどもあるのだが、お線香もまた「香」の一種である。この「香」という幹事はどのように成り立ち、意味が形成されていったのかについて歴史とともに定義している。

二障「「お線香」について」
次からいよいよ「お線香」についての話に移る。そもそも「お線香」の歴史はどのように辿っていったのかは、本書でも、

「インドや中国の「お線香の歴史」は確認できていないのですが、日本においても「いつ、誰が、どこに伝え、いつから国内で製造が始まったのか」さえも不確定のままです」(p.40)

とされており、未だに解明できていない。しかし中国大陸やインドから日本に伝来した仏教の歴史を紐解いていったら、それに派生してお線香が使われてきた経緯も見えてくるかも知れない。そこについては私の憶測でしかないため、仏教伝来の文献を読みあさるしかない。
少なくとも日本で「お線香」が使われたのは、本書では1478年(文明十年)が最初となる。
他にも本章ではお線香の使われ方として、よく使われる「供香(ぐこう:神仏や故人に供える香)」の他にも瞑想や癒やし、空気清浄や匂い消しにも使われるのだという。

三章「お線香の種類」
「お線香」というと、わたしたちが一番イメージするのは緑か青のような細い棒のものを思い浮かべるだろう。これを「日本式線香」と呼ばれており、これに似ているものとして「竹線香」というのがある。他にも色々な線香があり、波形の線香といった形状のものから太さ、光沢に至るまで様々な違いがある。

四章「お線香の原料」
そもそもお線香は何でできているのだろうか。これもお線香の種類によって異なるのだが元は、「椨(たぶ)」という木の樹皮から作られている。その樹皮を粉にして作られ、他にも香りや色などで使う粉までも紹介されている。

五章「お線香の製造」
お線香の製造過程はTV番組でも放映されたことがあるのだが、本章でも具体的な製造方法について取り上げている。技術の進歩もあってか、大量生産もさることながら、製造でもコンピュータ化しているのだという。線香の世界にも時代の流れがあると言える。

六章「お線香の特徴」
お線香の特徴とひとえに言っても様々であるのだが、香りもあれば、煙といった見える特徴もある。それに派生して「癒し効果」など心理的な影響もある。

七章「お線香の雑知識」
春のお彼岸のシーズンにはお墓参りなど様々な所で「お線香」が使われる。その中で、お線香における悩みや失敗について、どのように解決したら良いのかについて「雑知識」と言う形で伝授している。

今日は春分の日であり、この日を含めて3連休である。レジャーをしたり、旅行に行ったりする方もいる一方で、春のお彼岸シーズンであることから、墓参りに行くご家庭も少なくない。その上で良いお線香を選び、使うことで先祖への供養をしたいものである。本書はそのお線香を知り、その上でお線香選びの材料になる様なエッセンスがたっぷりと詰まっている一冊と言える。