心は前を向いている

人は誰でも前向きになる力を持っている。とはいえ四六時中前向きになる事はほぼ不可能である。よほどの無鉄砲か、あるいはあっけらかんとした人で無い限り。私も本書のタイトルを見ていて疑いを持った。それは自分自身が後ろ向きになる事は度々あり、現在進行形でそうなっているからである。それなのになぜ本書のようなタイトルを作ったのか、そして心とはいったい何なのか、その力とは何なのかそのことを心理学の実験を通して見ていったのが本書である。

第1章「信頼する力」
「信頼」と言っても「他人」「自分」など、対象によって異なる。しかし心は「バイアス(偏見)」によって変化するが、それがネガティブなものになってしまうと心に余裕がなくなってしまい、「不信感」が芽生える。

第2章「想像する力」
人は誰しも「想像」をする。しかしその想像もポジティブなものからネガティブなものまで存在するのだが、小さい頃はポジティブなものが多い。しかし理性が生まれ、育ち、現実を見るようになってくるようになると心の余裕がなくなり始め、次第に想像もネガティブなものになっていく。

第3章「錯覚する力」
「錯覚」は自分自身が意識をしていなくても起こり得る。この錯覚が時として有益な物になるものもあれば、時として死んでしまうような事故も起こり得る。それほど錯覚は危険なものかと思ったら、トリックアートのように脳の錯覚を利用したものまである。

第4章「前を向く脳」
そもそも脳は物事を対処する際に、前向きになるのだという。それは過去をどのように受け入れるかというと、物事をありのままにとらえるのでは無く、「昔は良かった」と言える様にポジティブにとらえ、それを未来に向けて解決して行くため、ポジティブになる、前を向くのだという。

第5章「がまんする力」
がまんはできる人もいれば、できない人もいる。その差はいったい何なのだろうか。そのことについて「現在自己」「未来自己」といった用語から取り上げている。

第6章「疲労は大敵」
「疲労」と言っても肉体的な疲労もあれば、精神的な疲労もあるのだが、本章では両方のことを指している。どちらにしても「疲れる」わけだから判断力も、余裕もなくなってしまい、ケンカを生んだり、未来も考えられなくなったりしてしまう。そのため「大敵」と言っている。

第7章「悲しむ力」
ネガティブな感情は何も悪いことばかりではない。物事を慎重に考える力も養うこともできるし、記憶力も上がる。

第8章「希望の力」
そして最後には「希望」がやってくる。当然ポジティブな感情であるのだが、希望を見出すと言うことは脳にとっても、心にとっても「思いやり」を持つことになるのだという。

自分自身の心について面と向き合っているのか、そして自分自身が蔑ろにしていたことはないのか、そのことを心理学の観点から学ぶ・確認するというよりも、対話する、と言った方が正しいのかも知れない。心に病を抱えそうになた時に是非手にとって欲しい一冊である。