エースの系譜

本書は「もしドラ」こと「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」で有名な作家であるが、元々は放送作家として秋元康氏に師事していた。その後AKBのプロデューサーやお笑い学校講師を歴任し、2009年に作家となった。処女作が「もしドラ」で200万部以上売り上げてきた。その後「甲子園だけが高校野球ではない」と言う本も出版され、その後に出版されたのが本書である。

「もしドラ」にしても本書にしても野球、それも高校野球の思いが強かったらしいが、意外なことに高校の頃は軟式野球部で投手をやっていたのだという。実際にあとがきに書いているのだが、著者が通っていた高校には硬式野球部が存在しなかったことから甲子園への思いはひときわ強かったのかも知れない。もしかしたら「もしドラ」にしても、「甲子園」にしても、そして本書にしても、著者は甲子園三部作を書きたかったのではと邪推してしまう。

それはさておき、本書は野球における「エース」のそれぞれを綴った物語である。野球におけるエースは守備の要であり、投手としても先発であるなど花形とも言える立場にいる。他のスポーツでは点取り屋だったり、攻撃の要で言われたりするのだが、野球の世界だけは投手のことを指しているが、それがなぜそうなったのかは定かではない。代々受け継がれるエースの存在はそれぞれの「個性」と、学校、もといチームの「伝統」を受け継ぎながら続いてきているのが分かる。それぞれのエースが置かれている立場、趣味、嗜好、試合状況などが事細かに描かれており、ある種の短編集のような感覚で見ることができるところが面白かった。