儲けすぎた男―小説・安田善次郎

「儲けすぎた」と言う言葉に引っかかって購入したのだが、「儲けすぎた」と言うと「秒速」と言う言葉で世間に名を馳せた方が、急成長したものの、昨月末に資金ショートし、六本木にあるオフィスや車、さらにはマンションを売却した、と言うことで話題となっている方を連想してしまう。もうすでにニュースになっているので、名前は言うまでもないのだが、「儲けすぎ」というイメージからちょっと関連づけられるのではないかと思い購入に至った訳である。

それはさておき、本書はかつて「安田財閥」と言うのがあったのだが、それを一代で築いた男・安田善次郎の生涯を描いた作品である。元々は半農半士の身分でありながら奉公人として江戸に渡り、銀行をつくり、保険会社をつくり、一大財閥に育て上げ、さらには銀行・交通などのインフラの観点から国家を作り上げた一人としても知られている。

他にも東大の象徴である安田講堂があるのだが、この安田講堂こそ、安田善次郎が東大に対し多額の寄付をした事により名付けられたという(詳しく言うと安田が暗殺されて、初めて寄付者が安田であると知ったときに名付けられた)。そのため本書の装丁にも安田講堂の絵が出ている。安田善次郞は生涯「金融屋」であり続けてきたのだが、相手への貢献を忘れていなかった。そのような人物の光と影を全て表した一冊と言える。