東京ピーターパン

本書は「音楽小説」と言われる一冊である。平凡な30代のサラリーマンと、ギタリストだった60代、さらにはバンドマン志望の20代、高校生とその姉と世代がバラバラな5人が新しいバンドをつくり、音楽を歌い上げるのだという。しかもそのきっかけはサラリーマンが起こした交通事故だから驚きである。時系列に、それも多重で進められる物語の中でバンドのパートのようにそれぞれ異なるモノの、パートが混ざり合って1つの曲のようにできている。

実際に音楽小説なので、どのように表現したら良いのか分からない。ましてや「ロックな一冊」と言ってしまっては身も蓋もないのだが、ロックをやる、あるいはバンドをやるのに世代も境遇もいらない、共通点として「音楽が好き」ということだけが良く分かる。それだけでも一つの共通点だし、全く異なる5人がつながるのにも十分である。バラバラだった5人が1つになって起こる「奇跡」、その「奇跡」のできるまでが非常に面白い一冊である。