旅だから出逢えた言葉

「旅」は色々な意味で「広くなれる」。見識もさることながら、人の輪もあり、さらには行動範囲も広くすることができ、そのことで心の余裕も広くすることができる。

しかし「旅」の効果はそれだけでは無い。「語彙」も広くすることができる。ちょっと表現を変えると、様々な「言葉」に出会うことができるわけである。

本書は著者自身が日本国内のみならず全世界を旅し、出会った言葉を取り上げ、解説した一冊である。「言葉」と言うと「名言集」の事を連想させてしまいがちになるが、本書は「名言集」ではなく、偉人の言葉もあれば、父親や、旅先の人から聞いたとりとめの無い言葉も収録されている。むしろとりとめの無い言葉の方が最も肝心で、旅先ならではの言葉もあるのだという。行く先々で出会う言葉に出会うのだが、言葉を発する人、シチュエーション、風景などが合わさって言葉の重みがさらに引き立たせてくれる。

著者はあとがきにて「ぐうたら作家のどうしようもない旅の紀行文でしかない(p.221より)」と言っているのだが、読み手の自分にとっては、その「どうしようもない」部分こそ、人生に取ってプラスになる言葉がたっぷり詰まっているように思えてならない。