一夜漬け文章教室

私自身書評をやってかれこれ7年の月日が経ち、それでいながらもまだまだ文章のことについて分からないことが多い。それでいながら文章術にまつわる本を読んだり、実践したりしているのだが、もっともセオリーがないだけに、自分自身の文章もどうなっているのか分からない。

そこで本書は「一夜漬け」でできるのかどうかは置いといて、新聞記者や小説における経験を元にした文章のあり方について説いている。

第一章「まず、エッセイから始めよう」
まず、文章を書くために「エッセイ」から始めた方が良いことを提唱している。エッセイはあくまで「散文」の一種であり、文章力を鍛えるにはもってこいである。もっと言うと文章理論や型についてこだわらなくて良いと言うのもある。そのことを念頭にとにもかくにも「文章を書く」と言うことを最初に提唱している。本章では著名な方の「文章術」にまつわることも言及されているが、共通して言えるのは、

「多読、多作が大切。文章を書くのに理論は邪魔」(p.19より)

という。私自身の経験も踏まえても全くその通りと言える。

第二章「私流・「型破り」の文章教室」
文章にまつわる「型」であったり、「定説」であったり、文章にまつわる表面的な事を取り上げることが多い。私自身もそういった本に振り回されてきた経験を持っている。そのたびに、自分自身の文章について疑心暗鬼になってしまうことも多々あった。しかし本章では「型破り」と題して文章を書く方法について2つしか教えていない。しかもその2つは最も基本的なことであるのだが、あくまで文章を書くことに理論はないことを前提にしている。

第三章「小論文必勝法」
国語の授業でも、さらには大学の入試でも「小論文」と言うものが存在する。小論文というと「論文」の一種だから、論理的な組み立て方で文章を書くことが臨まれるのだが、著者は「小論文は雑文である(p.56より)」と喝破している。もちろん理由は存在するのだが、この一文を見る限り第二章よりも型破りの印象を持ってしまう(もちろん良い意味での型破りである)。

第四章「エッセイをダメにする四つの傾向」
エッセイは形式にしても、テーマにしても自由であるのだが、その反面ダメにしてしまうのも簡単である。どういったことでダメになってしまうのか本章では「羅列」「テーマ」「展開」「冒頭・末尾」の4つのヒントを元に傾向を説明している。

第五章「文章に「スキ間」を作れ」
論理的で仮説を交えたシンプルな文章、そして分かりやすい文章が求められる昨今だが、当然分かりやすい文章の方が良いのだが、漢字や表現を小学生並みにすることが分かりやすくすることではない。著者の言う「分かりやすさ」は本章のタイトルにある「スキ間」が鍵となる。この「スキ間」とはいったいどういったものなのか、それは文章と文章の間といったみみっちい話ではないことは確かである。

第六章「いかにして「独創」のある文章を書くか」
独創的な文章を書くにはどうしたら良いのか、というマニュアルは存在しない。しかし取り合わせの仕方によって人それぞれの文章が完成する。日々刻々と表現や単語が新しく生まれてくる。その新しく生まれたものを取り合わせてみたり、今まであるような言葉を取り合わせてみたりすることによって自分自身の持つ独特な文章を生み出すことができる。

色々文章術を読んできた私だが、そういった本には、文章における「型」とか表現の方法がよく使われているのだが、本書にはそういったものがない。むしろエッセイや作文、散文といった表現にしても、文章形式にしても成約のないものについての文章に関する本はほとんど見当たらない。