ロシア 語られない戦争 チェチェンゲリラ従軍記

ロシアというと今年の2月にソチでオリンピックが行われた事が記憶に新しい一方で、3月辺りからクリミア独立について欧米諸国と対立していると言う印象も捨てきれない。現在のロシアは資源による経済発展は目覚ましい一方で、踊り場にさしかかっており、資源の輸出や技術協力を求めて日本をはじめとした国々との外交を行っているのだが、先述の出来事により、なかなか上手く行っていない側面がある。

その一方でロシアは前からチェチェンゲリラとの戦いが続いており、ソチオリンピック直前までもそういったリスクにより、ボイコットをする動きも見せていた。本書はニュースではあまり語られることのない戦争としてチェチェンゲリラの従軍について暗殺されたリトビネンコ氏の

第一章「従軍」
チェチェンとロシアとの紛争は今もなおずっと続いているのだが、本章を見るに2000年から続いている事が分かる。チェチェン独立派がゲリラとなってロシアと戦っているのだが、その独立派が「地下政府」と言うのを作って、政治的なやりとりを行っているだけではなく、ゲリラ戦の作戦立案も行ってもいる。しかしそのチェチェン独立派の多くは名ばかりでイスラム教徒で作られた、イスラム武装勢力であったという。

第二章「脱出」
チェチェンはロシア以外にも国境はグルジアと言うところだけであり、チェチェンからグルジアに難民として亡命すると言う人も少なくなかった。そのことでかねてからロシアはグルジアに対し非難をしていた。

第三章「諜報」
ロシアとチェチェンは武器による戦争ばかりではなく、「情報戦争」も行われている。どのような戦争なのかというと機密情報や二国間における重要情報を奪ったり、奪い返されたりするような戦いのことを表す。しかし他にも2004年9月に起こった「北オセチア学校占拠事件(ベスラン学校占拠事件)」なども取り上げられている。

第四章「拘束」
著者はチェチェンとロシアと取材をしてきたわけだが、一度だけ拘束されたことがある。それは2001年の時にチェチェンで取材を行っていたときに、FSB(連邦保安局)に拘束されたという。その顛末について著者自身の体験を述べている。

第五章「ひと、点描」
チェチェンで戦っている人たちのこと一人一人について、メディアではほとんど報道されていない。そのため本章ではチェチェン内部にいて、独立運動として戦い続けた人々を取り上げている。

本書は取材録ばかりではなく「参考資料集」として、地図や作戦ルート、さらには写真までふんだんに盛り込まれている。私たちの知らなかったチェチェンの実情と、チェチェンとロシアとの紛争とはいったいどのようなものだったのかが全部ではないものの、良く分かる一冊と言える。