東京消防庁 芝消防署24時 すべては命を守るために

「死と隣り合わせの仕事」というのはいくつもあるのだが、それと共に人命を救う仕事というとさらに少ない。その両方に当たる職業の一つとして「消防士」が存在する。火災や事故などから人を救うために素早く、性格に、危険を冒しながらも助ける仕事、しかも「うまくいかない」という諦めさえも許されない仕事である。

本書は著者自身が東京にある芝消防署に7ヶ月もの間取材を行いながら、現地でどのような事をやっているのかを克明に記録しつつ、小説という形にしたノンフィクション作品である。ノンフィクション作品であるだけに当然実際の消防署の方々の話も生々しく描かれているが、訓練から、実際の出動にかけて、さらには待機中には何をやっているのかも描かれている。

本書を読んでいる最中、私が川崎に住んでいた時、住まいからちょっとは慣れたところに消防署があった。と言っても割と大きな消防署ではなく、むしろ出張所や駐在所というような施設だったことを覚えている。そこを通りかかることが度々あり、休日でも平日でも消防隊員が筋トレをしたり、想定訓練を何度もやったりしている姿を見たことがある。時折怒声が聞こえてきたことも今となっては懐かしいと言えるのだが、その怒声も本書のようなセリフに似たような事が書かれているのを聞いて思い出す。

消防士は他の仕事とは違い人の生命、それも緊急時に人の命を救う、という仕事を担っている。そのためミスも許されないし、僅かなミスも命取りとなってしまう。なので常日頃から緊張感を保ちながら過酷と言われる訓練の日々を続けながら、いざという時に備えている。その姿を、本書を通じて思い知らされる。