政治の修羅場

国会中継は当初NHKで放送されていたのだが、現在ではニコニコ生放送などでも放映され、政治的な答弁については様々なコンテンツで見ることができる。しかし国会中継では見られない政治的なやりとりは水面下で、まさに血みどろのような権力争いや人事・カネをめぐる闘争が起こっている。

本書は自ら政治家として様々な修羅場をかいくぐった鈴木宗男氏がこれまで印象に残った政治家と共に、これまでの政治家としての体験を回顧した一冊である。

第一章「スバ抜けた政治勘 田中角栄」
著者が政治秘書としてついたのが田中角栄である。首相の中でも最も記憶に残る人物の一人で、高度経済成長の礎となった1人として挙げられる反面、ロッキード事件などの金権政治の腐敗を晒してしまった政治家の一人としてあげ得られる。本章にはそれに抗して作られた派閥「青嵐会(せいらんかい)」も取り上げられているが、これについては次章の人物が中心となるため次章にて詳しく説明する。

第二章「諸刃の剣「情の人」 中川一郎」
「北海のヒグマ」とも呼ばれ自民党タカ派の象徴の一人として挙げられるのが中川一郎氏である。もちろん亡くなられた中川昭一氏のお父様である。その方と現在も国会議員として活躍している元東京都知事の石原慎太郎氏とで作られた派閥「青嵐会」がある。これは「渾沌停滞した政界に爽やかな風を送り込もう」という意味から名づけられた。もちろんタカ派の集団であるためマスコミからは「極右手段」と批判され、その後、解体された。その後中川氏は自ら派閥を作ったが、非業の死を遂げてしまった。

第三章「人間関係の達人 金丸信」
首相にこそならなかったものの、幹事長としての辣腕を振るい、「政界のドン」「キングメーカー」になでなった金丸信氏だが、著者曰く人間関係の達人出会ったのだという。もちろん政治的なやりとりをする際に人間関係は最も重要な要素としており、著者にも人間関係の重要性を度々口にしていたという。しかし東京佐川急便事件により失脚、そのまま帰らぬ人となった。

第四章「壊し屋の正体 小沢一郎」
現在も生活の党代表として活躍している小沢一郎氏だが自民党時代には国務大臣(自治大臣)や自民党幹事長を務めた。その後、新進党や自由党を次々と結党し、壊していった。「壊し屋」と言う名は党の解体も含まれるだけではなく、38年続いた「55年体制」の崩壊も彼の演出によるものであった。

第五章「日露を動かす プーチン」
著者はロシアとのパイプが存在しており、「ムネオハウス」がその代表格と言える。もちろん北方領土問題について先鞭を切った一人としても知られており、現在政治家になるための公民権停止期間でありながらも、日露関係改善の一端を担っている存在である。その著者がプーチンの印象について取り上げている。

第六章「宿敵の研究 田中眞紀子と小泉純一郎」
もちろん北方領土返還への動きを見せていたが的も存在した。その代表格が田中眞紀子と小泉純一郎の存在であった。実際に両者とはどのようなわだかまりがあったのか、そして対立はどのように進んで行ったのかを著者自身の立場から綴っている。

懲役を終えて出所し、現在は先程も書いたように2017年まで公民権停止により政治家になれない時期である。しかしコメンテーターや講演としての活動は精力的に行われており、現在も日露関係改善と北方領土返還への活動を進めている。その方が政治家にかけた思いと考え方について、自らの政治家人生を振り返りながら定義している一冊である。