別れる力 大人の流儀3

「一期一会」という言葉が存在する。人には様々な出会いがあり、それと同じ数の「別れ」が存在する。しかし「別れ」の感情は人を失う感情をもよおしてしまうため、なかなか受け入れがたいことの一つである。しかし「別れ」が来ない限り新しい出会いは存在しないと言っても過言ではない。

本書は「別れ」の重要性と人生の在り方について取り上げているが、今回は「大人の流儀」のシリーズ3作品目と言うことで本書のタイトルにある「別れ」「得られるもの」「正義」などを列挙している。

第一章「別れて始まる人生がある」
著者は最愛の妻を失った経験を持っている。有名な話であるが、最初の妻は女優・夏目雅子である。最愛の妻の「別れ」を経験し、その後も多くの人物の出会い・別れを経験したとき、著者は本章のタイトルにあることを悟った。

第二章「楽して得られるものなんてない」
得られるものは、楽して得られるものもあれば、苦労して得られるものもある。しかし前者はほとんど無く、むしろ後者が多い。しかし後者は得たときの充実感は何者にも代えがたい。

第三章「正義っぽいのを振りかざすな」
私自身「正義」と言う言葉は嫌いである。それを振りかざしてエゴイズムに走っている人を幾人も見かけたり、TV越しに見たりしているからである。本章は「アメリカ」に関する言論、学者に関する言論について著者なりの考えを言及している。

第四章「本物の大人はこう考える」
「本物」と言う考えは人それぞれであるが、著者は数多くの趣味・知見・経験を醸成して持っている「本物」を披露している。著者が得た趣味・知見・経験は自分でもなかなか得る機会がないものばかりである。そう考えると今まで3シリーズ刊行しているが「大人の流儀」の根幹を本章が為しているような気がしてならなかった。

著者というと、阿佐田哲也(色川武大)の存在を無しに語ることができない。これについて派「いねむり先生」が詳しいのだが、作家・麻雀・人生それぞれに阿佐田哲也の生き様をもとに学び、そこから著者自らの「流儀」を育てた様に思えてならない。本書は今までの中でも寂しい「別れ」をテーマにしているが、この「別れ」によって「大人」の概念を醸成していくのか、と自分なりに感じてしまう。