似ない者夫婦

「似たもの夫婦」と言う言葉がよく出てくるのだが、辞書を引くと、

「仲のよい夫婦はその性質・趣味などが似るということ。また、性質・趣味などが似ている夫婦」「広辞苑 第六版」より)

とある。性質や趣味などが似ているというのはおおざっぱであるのだが、細かい所で似ていると言うところを考えると「似たもの夫婦」というのはよくある夫婦と言っても過言ではない。

しかし本書に出てくる夫婦は細かい部分ですら似ていない夫婦だという。著者である津村節子氏と夫の故・吉村昭氏の夫婦関係、それも最後の10年の思いを綴っている。作家同士の夫婦というと珍しい印象を受けるのだが有名どころでは三浦朱門・曽野綾子夫婦がおり、両者が対談(喧嘩?)した「夫婦口論―二人で「老い」を生きる知恵」と言う本を刊行している。最近でも「夫婦のルール」という本を刊行されたが、こちらも「夫婦口論」にほど近いテイストになっている。

本書の話に戻す。お互いに作風の違う作品を生み出していく中で出てきた夫婦の関係とは何か、夫婦共々が病気を患った話、さらには他の作家との交流談まで細々と描かれている。