ソーシャルゲームだけがなぜ儲かるのか

ソーシャルゲームの勢いは止まらない。最近陰りを見せたとは言え、勢いを見せる起業として「パズドラ(Puzzle & Dragons)」を出しているガンホー、ソーシャルゲーム業界のメジャーと言われているMobageを擁するDeNA、さらにはGREEなどソーシャルゲームによって急成長を遂げた会社は色々とある。その急成長に伴い、怪物市場となり、本書にて「第五次産業」になるのではないか、と分析をしている。本書は急成長を遂げたソーシャルゲーム業界の変化とこれからについて述べている。

第一章「怪物市場はこうしてできた」
ソーシャルゲームの市場は2008年頃に誕生し、年々急成長を遂げていった。2011年まではコンソール(ゲームソフトなどのソフトウェア)の売上が多かった、というよりもソーシャルゲームが誕生するまではコンソールしかなかったのだが、ソーシャルゲームの誕生後、瞬く間に急成長となり、2012年にはコンソール市場を抜き去るほどの勢いを見せた。もちろんコンソール市場が完全になくなったわけではないのだが、ソーシャルゲームに傾いたと言っても過言ではなかった。そのソーシャルゲームの利益の根源としては「課金システム」にあるのだが、これについては以前「コンプガチャ問題」が起こった記憶がある。現在はガイドラインが構築され解消されつつあるのだが、まだまだ他の問題が噴出する可能性もあるなど、予断を許さない状況にある。

第二章「二一世紀型商品の成功トライアングル」
とはいえソーシャルゲームに課金システムはあるが、実質無料で楽しむ事ができる。俗に「無課金」でも遊べる事が多いのだが、実際のところ課金すると、ゲームを行うに有利となることが多く、それを見込んでコインを売るようなこともある。しかし、ソーシャルゲームは目に見えない他人との協力、ないし対戦するゲームであり、その中で交流も深めることができるので、それが口コミになり、爆発的な集客力につなげられる事もできる。

第三章「三つのイノベーションを見逃すな」
しかし現在は急成長を遂げたとしても、市場は成熟し、衰退するプロセスが残っている。もちろん成長が早ければ早いほど、衰退も早まってしまうのが原理としてあるのだが、それを食い止め、成長を続けさせる考え方は存在する。それが本性で言う所の「三つのイノベーション」である。大きく分けると「インフラ」「マーケティング」「ソーシャル」と分けられる。

第四章「第五次産業を創造しよう」
「第一次産業」と言うと農業、「第二次産業」と言うと製造業、「第三次産業」と言うとサービス業なのだが、本章では「第五次産業」と書かれている所を見ると、では「第四次産業」は何なのか、と疑いたくなってしまう。調べて見たら、「第四次産業」「第五次産業」の定義は存在しないのだが、産業の議論の中で「情報通信業」にあたるものが、現状「第三次産業」として扱われるのだが、「第四次産業」に分類すべきではないか、という議論がなされている。本章では「情報通信業」は「第四次産業」であることを前提に踏まえた上で、ソーシャルゲームの市場が新たな産業として変革をもたらすことから「第五次産業」と定義しているのではないかと推測できる。

ソーシャルゲームの市場はこれからも伸び続けていくかも知れないのだが、情報通信そのものがドッグイヤーで進んでおり、次々と新しいコンテンツや考え方が生まれてくる、めまぐるしい市場である。急成長を遂げた場合、今度はどう「守っていく」かが大きなカギになる。以前中国大陸の古典「貞観政要」を取り上げたときも、「創成は易く、守成は難し」と言う言葉を思い出す。いかにして成長をする、「守成」を為していくかが、今後のソーシャルゲーム業界の大きなカギになる。それについて経営者らはいかにして気づくことができるのか、注視したい。