次世代へ送る<絵解き>社会原理序説

dZERO社様より献本御礼。
本書のタイトルを見ると難しい本のように思えてしまうのだが、実際に見てみると挿し絵もふんだんに盛り込みながらも、わかりやすく社会や経済、政治、さらに将来の夢について大学生に対してわかりやすく、それでいておもしろく描かれている。ではその中身を見てみよう。

1.「社会とは何か」
「社会」というと得体の知れないように思えるのだが、国家もあれば、会社もあり、さらにはそれらを包括した「共同体」となるものができている。その「共同体」と呼ばれるものが「社会」となるのだが、現実世界で起こっているものに限らず、インターネットなどの「バーチャル」と呼ばれる世界にも同じように「社会」が存在する。

2.「社会はどのように発展してゆくのか」
では社会を発展されるのか、著者曰く、学校が変化し、職業もさらに多様化していく。そしてあたかも「ハンバーガー」のような形で展開していくのだという。

3.「経済とは何か」
ここからは社会の中の活動にクローズアップをしているが、その一つとして「経済活動」が挙げられる。では、経済活動における「経済」とはいったい何なのか。簡単に言うとモノをつくる(生産する)ことと売買する(消費する)活動そのものを言う。

4.「四つの階層のコーン」
「四つの階層」はとんがりコーンというお菓子のコーン状に階層のようになっている。いわゆる「ピラミッド」と呼んでも差し支えない。ここで言う「階層」は社会における活動や考え方を四段階に分かれている。

5.「マダルの虎 人間の常識が及ばない世界」
「マダルの虎」はインドに伝わる物語である。その物語から得られるモノ、それは「常識」に対する「問い」であった。

6.「価値観とは何か」
価値観は簡単に言うと「大切なもの・こと」だったり、「考え方」だったりするモノによって成り立つ。もちろん人それぞれなのだが、その「価値観」が構成されている要因は誰もが同じである。

7.「政治とは何か」
「政治」は別に国会とか、都道府県議会、市町村議会で行われているだけではない。会社の中にも「派閥」があり、「政治」が存在する。もちろん本章で取り上げている「組合」もまた社会を構築していく上での「政治」を行う場でもある。

8.「社会の価値観を作っているのはだれか」
価値観は個人にも団体にも、そして社会にも存在する。しかしよく考えていくと、それをつくっているのは誰かという本章のタイトルにあるような「問い」が出てきてしまう。実際に「誰か」という答えはなかなか得られにくい。もっと言うと一人とは限らない。場合によっては社会にいる人々全員が価値観を構成していると言っても過言ではない。

9.「社会を変革するのはだれか」
次に「社会を変革するためにはどうしたらよいのか」という問いであるが、変えると言うことは利益を得る人と損をする人を変える必要が出てくる。しかし変えるとなると利益を得る人であれば、それを確保するために躍起になる、もしくは現状維持にするよう働きかけるような事をする。そういった「抵抗勢力」と呼ばれる存在を抑えて変革するかと言うのが大事になってくる。

10.「仕事とは何か」
では働く人にとって「仕事」とは何かを言うのを考える必要が出てくる。本章以降になってくると、だんだん実感として沸いてくる。これを考えるためには「仕事」と「社会」との兼ね合いが大事になってくる。

11.「起業家になろうとする君へ」
最近「起業家」がもてはやされており、それに感化して志望する方も多くなってきている。では起業家になるためにはどうしたらよいのか、そして何が必要なのかを説いている。

12.「科学者、技術者になろうとする君へ」
大学で科学や工学などの理系技術を学んでいる方であれば科学者や技術者になろうとする方も多い。その方々は社会的にどのようなポジションにいるべきか、そのことについて提示している。

13.「企業や役所などの大組織で働こうとする君へ」
今となっては働き方も多様化して、そういう人も少なくなっているかというと、むしろ未だに大企業や公務員など「組織」の中で働きたい方々が多い現状がある。その理由として「安定していること」などが挙げられるのだが、本当の所大企業でも大規模なリストラがあり、公務員でも給料カットと言った事が起こっており、安定的に過ごせるとは言い難い。しかし大企業や公務員にも社会的な役割を持っており、大企業なりの、あるいは公務員なりの処世があるという。

14.「教育、メディア、宗教で働こうとする君へ」
情報を教え、情報を発信し、そして宗教を信仰すると言う章であるが、ここで共通して言えるのは情報と心の在り方というものを「伝える」役割を担っている。もちろん昨今ではネットがツールとして盛んに使われているため発信しやすくなるのだが、損得を越えてどのように「伝えるか」が重要になってくる。

15.「政治家になろうとする君へ(1)」
16.「政治家になろうとする君へ(2)」
社会の中の根幹として国家が挙げられ、その国家の在り方を議論し、決めていく役割を担うのが政治家の役割である。もちろん国を扱う国会議員もあれば、都道府県を扱う、または市町村を扱う議会議員も政治家となる。もちろん政治活動をするためには情報を発信するなどのコントロールも大事になり、多様な人々の要求に応えると言うことも必要になってくる。他にも国の政治であれば国家間、市町村や都道府県の場合は地方間のやりとりも大事になってくる。

17.「世界で一番のトマト 幸せな生き方への手がかり」
社会としての在り方について第5章の「マダルの虎」に続いて「世界で一番のトマト」を取り上げている。素朴な物語であるが、これからの社会の在り方について考えさせられる物語である。

社会の在り方から国・経済・働き方・職業に至るまで幅広く考えさせられる一冊である。もちろん分かりやすく説明されているだけでは無く、物語や挿し絵がありすんなりと頭に入ってくる。これだけのボリュームでアリながら全体的にもページ数は少ないので、これから大学生になる方、あるいは新しく社会人を迎える方だけではなく、今高校で勉強している方であれば社会勉強の一環として読むと良い一冊である。