劣化するシニア社員

私自身、現在の企業事情はあまりよくわからない。もっとも中小企業の場合は、若い人だけで組んでいる企業もあるので、一概に会社すべて本書のように該当するわけではない、と言うことだけは付け加えておく必要がある。

企業の中には、「シニア」と呼ばれる社員がおり、周囲をかき回しているのだという。シニア社員が増えている原因、それは「定年延長」や「再雇用」といった制度がある。それでシニア社員が周囲をどのようにしてかき回しているのか、そして対策には何があるのか、そのことについて取り上げているのが本書である。

第1章「「縦横無尽」に振る舞うシニア社員たち」
「シニア社員」が問題児化するには6つのパターンがあり、

1.嘆きタイプ
2.おんぶに抱っこタイプ
3.わが道を行くタイプ
4.ご隠居タイプ
5.無責任タイプ
6.勘違いやりすぎタイプ
(いずれもp.27より)

とある。それぞれのタイプでどのような傾向にあるのか、実際に起こったケースを元に紹介している。そのケースは実際に合った話で産業カウンセラーとしての体験談も交えている。

第2章「なぜ「問題児」化するのか」
なぜシニア社員が「問題児」となるのだろうか。その一つとして「依存」がある。会社に対する「依存」、組織に対する「依存」、そして現状認識に対する「依存」と、様々な「依存」が相まって、問題児となる。もっとも「嘆き」にしても「意志疎通不足」にしても「依存」が引き金になって起こっている。

第3章「ほんとうは本人が苦しい」
とはいえ、そういったことを悪く言っても、本当に苦しいのは、他ならぬ「本人」にある。実際に長らく職場にいて、様々な仕事を経験してきた。その「経験」や「考え」が変化への妨げとなり、依存となっていった。その依存が思わぬメンタル不調をきたしてしまい、会社からも疎まれ、畑違いの職場に配属されたり、組織から排斥されたりすることもあり、寂しい思いをしてしまう現状もある。

第4章「その職場環境がやる気を奪う」
では、職場環境をつくる観点からやる気を奪うのはどのような傾向なのか、そしてやる気を取り戻すためにはどうしたらいいのか、まずは現状認識をチェックリストと言う形で認識しながら、チェックした項目に対してどのように対策をして行けば良いのかを提示している。

第5章「周囲の社員の危険な思いこみ」
しかし職場環境が崩壊する、あるいはシニア社員が問題児化するのは、何もシニア社員自身だけではない。周囲の社員の思い込みによって問題児化してしまうこともある。その理由としてシニア社員を「お荷物扱い」にしてしまうこと、過剰な期待をかけてしまうことなどが挙げられる。シニア社員を問題児化しないためには、シニア社員自身の努力も大切だが、それ以上に周囲もどのように接したら良いのか考える必要がある。

日本は高齢化社会といわれており、今後もまた「シニア社員」と呼ばれる存在が増えていくことは間違いない。その環境の中で経験と実績を替え備えているシニア社員をどのように扱うか、そしてシニア社員を組織でどのように役立てるのか、それが出来るかどうかは企業のみならず、組織にかかっている。同時にシニア社員も刻々と変化する状況に対し、経験や得たことばかりでは無く柔軟性を持つ事もまた課題と言えよう。