築地魚河岸 ことばの話 読んで味わう「粋」と「意気」

東京・築地には日本中の魚介類が集まり、競りが行われる築地市場がある。市場の規模は、日本はおろか「世界最大」と言っても過言ではない。広さで言ったら他に東京都には太田市場があるのだが、売上や取引金額では築地市場が上である。

日本中から生きの良い魚が入荷し、業者たちによって活気づく築地はいったいどのような言葉が飛び交っているのか、本書は国語辞典形式にて紹介している。

第一章「基本編」
元々築地と魚市場のつながりが始まったのは1602年。江戸幕府が出来る少し前の時である。日本橋小田原町と呼ばれる所に魚売場を開設したことから始まる。
本書ではその築地のルーツだけではなく、築地ならではの用語も出てくる。中には「いなせ(鯔背)」や「大物」など私たちの生活で使われている言葉もあるのが面白い。あと、「兄貴」など寿司の世界でも疲れている用語もある。

第二章「応用編」
第一章の基本編だけで、私たちの生活や別の業界で使われている用語に出くわすことがあり、十分すぎるほどかと思ったら、まだ序の口である。今度はさらに築地の奥深さを知る事のできる用語が飛び交ってくる。中には「忙しいから後にしろ」や「大変だ」というような掛声も用語にある。また「さばを読む」などの慣用句も出てくるのだが、元々この築地から生まれた慣用句である。

第三章「よもやま編」
これまで築地魚市場の所ばかり書いたのだが、実際には「築地=魚市場」だけではなく「築地本願寺」など映画や文学の舞台となっている。築地の色が濃い映画というと「築地魚河岸(つきじうおがし)三代目」が挙げられる。

第四章「美味い魚の話」
とは言えど、築地は魚売場が中心である。そのため美味しい魚の話が必要で在る。もちろん魚にも色々な種類があり、寿司にして食べられるものもあれば、刺身もあり、煮物や焼き物にするような魚もあるなど食べ方はさまざまである。

築地は日本における魚の宝庫であると同時に江戸文化の根付いているところである。もっとも本書で取り上げてきた用語の中にも江戸弁がルーツになっているものもあるし、第一章にも書いたように私たちの生活に溶け込んでいる用語もある。築地で生まれた言葉は築地特有のものではなく、私たちの生活、もとい歴史と共に息づいていることを証明した一冊である。