日本の統治システムと選挙制度の改革

昨年の12月14日に衆議院総選挙が行われ、与党勢力が3分の2の勢力を維持し、安倍政権の勢いがますますつくようになった。アベノミクスもさることながら、会見に向けての意気込みもあるという。

政局についてはここまでにしておいて、本書は衆議院総選挙をきっかけに選挙制度とは一体何なのか、そして現在起こっている選挙問題のあり方について問いただしている。

第1章「議会類型・両院制・選挙制度」
日本の議会は言うまでもなく衆議院・参議院と分かれている。戦前までは衆議院と貴族院があった。一方でアメリカでは上院・下院など二院制をとっている。ほかにも議会で言えば、日本では英国型の「アリーナ型議会」に採用されている。

第2章「首相公選制への批判と代替策」
「首相公選制」は「第三勢力」と呼ばれるような旧・みんなの党や維新の会などが提唱している制度であるが、著者はこの首相公選制には批判的である。批判的な点としてイスラエルの首相公選制の失敗を引き合いに出している。さらに代替策としてフランスが行っている「半大統領制」を挙げている。

第3章「両院制の改革」
本章にて両院制の問題視しているのが「衆参ねじれ」があることである。そのことのほかにも参議院が衆議院のカーボンコピーになっていることも相まって「参議院不要論」を唱える国会議員・論者もいるのだが、本章では参議院の権限について議論をしている。

第4章「両院協議会の改革」
両院協議会とは、

「両院制の議会において議決の不一致が起こった際に、各院の代表が議案の取り扱いを協議するための機関」Wikipediaより)

とある。その両院協議会にある問題点も、前章と同じように「ねじれ」が起こった場合は、どうなるのかである。

第5章「衆議院・解散制度の見直し」
衆議院の解散は日本国憲法に定められているものである。その解散制度を見直すためには改憲する必要がある。その上で首相の指導力と、意味のない解散を防止するためにどのような改革をしたらよいのか提示している。

第6章「選挙制度の政治思想」
政治思想がいかにして「選挙制度」に影響を与えているのかというと、全くと言っても良いほど無い。これは戦後の政治ではなく、むしろ政治思想学者など知識人と呼ばれている方々に原因があるという。

第7章「選挙制度の政治理論」
では、選挙制度にどのような政治理論の影響を及ぼしているのか、本章では「強力効果説」「限定効果説」を交えて説明している。

第8章「「並立制」の下での総選挙と政党制」
「並立制」は1994年に導入された選挙制度であり、簡単に言えば衆議院総選挙で言えば「小選挙区制」と「比例代表制」が並行して行われている制度のことを指す。本章ではこの選挙制度の利点と欠点について1996年から2012年の計6回行われた衆議院総選挙の選挙結果を引き合いに出して考察を行っている。

第9章「衆参選挙制度の一体改革」
現在では「並立制」を採用している選挙制度にはどのような問題点があるのか。本章では選挙制度以前に、選挙制度を議論する上での問題点を指摘している。たとえば「関連性を意識しないで議論されていること」「統治システムの中で選挙制度が議論されていないこと」が挙げられる。

第10章「戦後日本の選挙制度の変遷」
現在のような選挙制度になったのは第8章でも書いたとおり1994年に入ったときである。それまでは中選挙区制が一時期をのぞき、長らく採用されていた。選挙制度改革を唱える方々の中には、かつてあった中選挙区制の復活を掲げる方もいるのだが、いったい中選挙区制の利点と欠点は何なのかを論じている。

第11章「選挙制度の意味論」
選挙制度にはどのような意味が存在するのだろうか、そのことを政治学類型とともに論じている。

日本の選挙制度にはまだまだ課題は存在する。それが国会内で議論されているのかというと、小さな所では行われているようだが、委員会や国会全体で議論されているのかというと、他に取り上げなければいけない、議論しなければいけない法案が多々あるため、野放しにされている現状がある。しかしいつまでも野放しにして良いのだろうか、というとそうではない。国政で言えば、今回の衆院選が終わり、次に国政が問われる場合、次に行われるのは2016年に行われる参議院通常選挙である。それまでに選挙制度が議論されるのか、定かではない。