ナマケモノに意義がある

ナマケモノというと、怠けている象徴として言われる動物であるのだが、実際にナマケモノはじっとして動かないのには理由があり、水の中に落ちるなど火急の時以外には動かず、合理的に生きるために身についた習慣である。

しかしその対極にあるのが日本人という人間であると言う。1日に10時間近く働き、それでいて、休みは週に2回(+祝祭日)と言うくらいである。日本人はかねてから忙しい生き物なのか、というと元来はそうでなかったという。紀元前の時には1日に3時間しか働いていなかったのだという。

本書はナマケモノの生態をもとに、人間にある「怠け」の良さと、そのうえで成功する事の本質について取り上げている。

第1章「怠けのススメ」
「怠け」と言うとネガティブな感じをする方も少なくない。しかし人間は放っておくと怠けるようにつくられているという。また生物の中にも働き者の生物もいれば、全くと言っても良いほど働かない、いわゆる「アリとキリギリス」にあるキリギリスのような人生を送る生物も存在する。そういったバランスでもって社会は成り立っているのだという。

第2章「「死ぬ」から人生は楽しい」
人だけではなく、生物は何らかの形で必ず「死ぬ」。その「死」までの人生をいかにして生きるかによって、人生をより充実なものになっていく。その充実なものにしていくための「自分らしさ」や「発達」について提示している。

第3章「人は正しく生きられるか?」
「努力は報われる」と言うことをよく聞く。私自身は半分本当で半分ウソであると考えているが、著者はそうではないと主張する。その理由として、
「能力というのは向き、不向きがあって、勉強だって同じなのだ。運動できない子は運動神経がないんだと本人も周囲もすぐ納得するくせに、勉強に関してだけは勉強の才能がないとはなかなか認めない」(p.102より)
とある。元々ある才能は何なのか、それを見抜くことも大切であるという。

第4章「「いい人」にわざわざなることはない」
巷の本屋で「いい人をやめる」ことを主張している本は数多くある。しかし、今の風潮では「いい人」になることを暗になるようにしつけているように思えてならない。そのような中で「いい人」として振る舞わないためにはどうしたらよいのか、そのことについて提示している。

第5章「「成功」の本当の意味」
本屋に行くといろいろな「成功」にまつわる本が並んでいる。しかしそれを読んでも成功するとは限らない。では、どのようにして「成功」に導いて行けばよいのかと言うと、そもそもの「成功」の本質を知る必要がある。

ナマケモノにはナマケモノの人生があり、利点や意義があるという。そのことを考えるとナマケモノになることは決して悪いことではないのだが、それが全てではないことは確かである。本書を読んで言えることは、決して働き続けること、そして「いい人」であることは、決して正しいものではないことである。