本は死なない~Amazonキンドル開発者が語る「読書の未来」

私自身、読書をしたり、書評をしたりする仕事なので、ほんとは密接にかかわっているといっても過言ではない。そのため本書のように本の歴史と、電子書籍について、そして出版業界をはじめとした本の「これから」について知りたいと思って、本書を手に取った。本書は今となってはメジャーとなっているAmazonの電子書籍であるkindleの開発者が読書はどのようにして変わるのかを示している。なお、本書は全部で21もの章に分かれているため、当ブログではその中から気になった5つの章をピックアップした。

1.「本の歴史」
本の歴史は「文字の歴史」とほぼ同一といえる。そのため数千年もの前、いわゆるエジプトやメソポタミアなどの「文明」が起こった時代から本は存在したというが、現存している本の中で最も古いものとして、紀元前500年頃につくられたエトルリア語の製本がある(現在、ソフィア世界史博物館に保存されている)。

2.「電子書籍の起源」
電子書籍ができたのは、いつ頃なのか。アメリカにおいて「電子書籍革命」が起こったのは2003年だといわれている。それに対し、日本では「電子出版学入門」という本において、1985年ごろからすでに作られ始めたとされている。1998年ごろには、今のような電子書籍のデバイスらしきものができたのだが、実際に購入するには書店に行かないと手に入らなかったため、不便な側面もあった。

7.「読書文化の存在意義」
読書文化は本がある限り続く。しかし本そのものが紙媒体から「電子書籍」といった電子媒体に変化することから、読書の方法自体は時代とともに変化している。しかしその中で本性にある通り「読書文化」の存在意義は何なのか、時代の変化とともに変わっている。あと、もう一つ気になるものがあった。

「たとえばアメリカでは、スマートフォンで電子書籍を読みながら歩いていても警官に止められることはないが、テキスト・メッセージを送信しながら歩いていると罰則の対象になる州もある」(p.110より)

現在日本でも「歩きスマホ」に対する啓発が行われており、地方によっては条例化の動きを見せているが、アメリカではすでに「歩きスマホ」に罰則がついているということはここで初めて知った。

11.「出版業界の革命的変化」
出版業界における「変化」には何があるのか、その一つとして書籍データを電子書籍として出版すること、現に行われているものでは紙媒体と電子書籍の両方で出版をすること、さらには電子書籍の専門出版社もでき始め、電子書籍を編集し、出版する動きもある。ほかにも「セルフパブリッシング」と称して、自分で電子書籍をつくり、Amazonなどで販売するという方法もあるため、出版業界そのものにも「革命」と呼ばれるほどの大きな変化はないにしても、年々変化しているといっても過言ではない。

21.「読書は「廃れゆく文化」」
日本でも「活字離れ」が叫ばれているが、実際のところ「読む人」と「読まない人」の二分化が激しくなっている。あたかも「貧富の差」と同じように。しかし全体的に言えば読書率は年々低下しており、新しく読書をする人も少なくなっていくだろうと著者は指摘しているのだが、本当にそうだろうか、というのはこれからの読書文化がどのようにして変わるのかにもよるのかもしれない。

日本でも2010年ごろに「電子書籍元年」と呼ばれるような電子書籍の参入が相次いだ。しかし現在も紙媒体は残っており、なおかつ、電子書籍も「共存」している時代といえる。しかしこれから5年後10年後はどのような文化になっていくのか、それは誰にもわからない。