たまさか人形堂それから

本書は「たまさか人形堂」という架空の人形屋を舞台にした短編集であるが、最初に収録されている作品からずっこけてしまった。タイトルは「香山リカと申します」。ニュースやワイドショーを観る方はお気づきだと思うが、あの精神科医を連想してしまうような名前である。ただ、本書で取り上げている香山リカはその人とは関係無く、あくまで人形の名前であることだけは付け加えておく必要がある。

他にも「髪が伸びる」や「小田巻姫」「ピロシキ日和」「雲を越えて」などの作品が収録されているが、いずれも登場する人形が異なる。何せ人形屋であるだけに、そこが舞台であるから、それぞれの人形に物語があると言えるのかも知れない。

ちなみに本書は「それから」と題しているが、2009年に発売された「たまさか人形堂物語」の続編として収録されているため「それから」と名付けられた。そういうことを考えると本書だけでも愉しめるのだが、「たまさか人形堂物語」も併せて読むとさらに面白いと言える一冊である。