冬眠の謎を解く

季節は夏であり、そろそろ虫や動物の活動が活発化する状況になるのだが、晩秋から初春にかけては「冬眠」を行っている生物も数多くいる。その「冬眠」を行うのは変温動物がほとんどであるのだが、そもそも「冬眠」とはいったいどのような習性なのか、そしてその「冬眠」を通じてどのような効果をもたらすのか、謎が多い。

本書はその「冬眠」にまつわる謎について迫っている。

第1章「低温で生きる体の秘密」
ヒトのような恒温動物だと、体温が下がると体内機能が停止し、体温によっては死に至る。しかし冬眠できる動物にはその低温でも生きるために心臓の動きから、細胞活動などについてどのような動きをしているのか、本章ではウサギ、シマリスなどを参考に実験を行っている。

第2章「冬眠物質を求めて」
ちなみにウサギ・シマリスは元々冬眠しない。第1章では様々なものを実験して冬眠に至ることができたという。そのことから冬眠する動物だけが冬眠するという前提が崩れた。冬眠をするにはある「物質」があるのでは、という「仮説」が生まれた。その冬眠物質を探すために再びシマリスをもとに実験を行うことになった。その実験の中から冬眠に関連する、ある「タンパク質」が発見した。

第3章「人工冬眠は可能か」
その「たんぱく質」でもって「人工冬眠」ができるのかについて取り上げている。もちろん冬眠ができたとして、どのように体温調節を行うのか、代謝はどうなるのか、睡眠によってどのように変化するのか、課題は数多く存在する。

第4章「冬眠がもたらす長寿」
次は冬眠にはどのような働きをするのか、シマリスの実験から長寿の働きを持つのではないか、という仮説を組み立てている。しかしそれが実証されるまでにはまだまだ検証する必要があるのだが、その仮説を組み立てたきっかけには、思いもよらぬ結果を生み出したことにある。

第5章「ヒトと冬眠」
ではヒトは冬眠ができるのか、そしてそのことによって「不老長寿」が成しえるのか、そのことについて取り上げているが、
実際に実験しているわけではなく、あくまで「推測」という中で取り上げている。

冬眠は冬眠できる動物のためかと思ったら、実際には第2章に取り上げたように物質を持つなど、条件がクリアできればもしかしたら人間も冬眠できるのかも知れない。本書はその可能性を見出した一冊である。