人にフェロモンはあるのだろうか?

「フェロモン」は辞書を引いてみると、

「動物の体内から分泌・放出され、同種の他の個体の行動や生理状態に影響を与える物質の総称」「広辞苑 第六版」より)

とある。動物でもフェロモンによる求愛行動を起こしたり、あるいは仲間を呼び寄せたりすることができる。しかし本書のタイトルにあるように人にもフェロモンは存在するのかどうかはどうしても気になってしまう。ものの喩えとして「フェロモン」は使われるのだが、本当に存在するのか、本書は選書の性格上「香り」「匂い」という観点から考察を行っている。

一章「フェロモンとは」
フェロモンの定義は辞書で調べたのだが、本書では、

「本書では、フェロモンを厳密に定義される物質としては捉えず、受け取った動物の生理機能に影響を与える匂い物質として広い意味で定義しています」(p.12より)

という形で定義している。動物の世界でも鳴き声でかわされるだけでは無く、フェロモンという「匂い」によって会話が為されることもある。ではヒトの場合はどうなのか、それは次章以降述べられている。

二章「ヒトで見られるフェロモンの作用」
ヒトにおけるフェロモンの効果について、本章では代表的なものとして「寄宿舎効果」を挙げている。「寄宿舎効果」とは元々、

「発見者が大学の寄宿舎で生活した時に見つけられた」(p.18より)

所から名付けられた。ルームメイトとしての生活の中で生まれてくるのだが、女性との生活の中で発見したこと、そして女性独特の生理現象からフェロモンが発見するなど状況は特殊と言えば特殊である。他にも本章では結婚相手や母性、さらには恐怖察知におけるフェロモンの匂いがどのようなものであり、どのような効果をもたらすのかも取り上げられている。

三章「ヒトのフェロモン」
二章で述べたようにヒトにはフェロモンがあると言えるのだが、どのような物質があるのか、本章では「短鎖脂肪酸」「アンドロステノン」「アンドロステノール」「アンドロスタジエノン」が挙げられている。

四章「匂いのア・ラ・カルト」
「匂い」は不思議なもので、フェロモンにもあるのだが、男性において女性に好かれる匂い、女性において男性に好かれる匂いもあれば、逆に嫌われる匂いもある。他にも生理現象などにより発せられることにより、良くも悪くも変わる匂いも存在する。またダイエットのことで言うと「太る」「痩せる」匂いもある。「匂い」とひとえに言っても様々なものがある。

五章「フェロモンの記憶」
フェロモンを与える、もしくは受けた記憶は残るのか、本章ではマウスの実験を通して脳内物質や神経細胞などがどのように記憶されていくのか、そして時を経てどのように変わっていくのかについて考察を行っている。

ヒトにフェロモンがあるのかと言うとあると思っていたのだが、具体的にどのようなフェロモンがあるのかについては本書に出会うまでは良く分からなかった。フェロモンと行っても「男女関係」といったものを思っていたのだが、他にも生理現象はもちろんのこと、様々な状況においてヒトはフェロモンを発することを本書にて証明されたと言える。