英語ベストセラー本の研究

3年前あたりからビジネスでも「社内公用語」として英語が使われるようになり、英語学習への風潮が高まってきている。しかし英語学習に関する本は、今も昔も存在しており、本書でも戦中・戦後にあたる1940年代から2000年代の英語本を数多く取り上げている。そう考えると英語本の歴史は深いといえる。

第一章「1940年代―第一次英語ブームの時代」
「英語本」と言っても英会話専門の本もあれば、受験のための英語勉強を行う本もある。ちなみに受験英語で言ったら単語帳や英文法もあるのだが、実を言うと戦中からあり、ベストセラーにもなったのだという。しかも戦中にベストセラーになった英語本は今もよく知られている本である。
また、戦後になってからはテレビ・ラジオで英会話の授業を行う番組も出てきはじめ、本も同様に出てきて、ベストセラーになった。

第二章「1950年代―受験英語隆盛の時代」
受験勉強としての「英語」はこの時代から隆盛し始めた。当時は受験勉強が今以上に加熱しており、受験英語に関する本は次々と出版されベストセラーとなっていった。本章でもそういった受験英語に関する本が取り上げられている。

第三章「1960年代―第二次英語ブームの時代」
この時期は「東京オリンピック」が開催された時期であり、受験に限らず英語に対する熱が高まっていったといえる。そのこともあり受験英語に限らず、口語や英会話に関する本が続々とベストセラーになっている。

第四章「1970年代―逡巡(しゅんじゅん)の時代」
「逡巡」とは、

「ぐずぐずすること。ためらうこと。しりごみすること」「広辞苑 第六版」より)

である。1970年代になると英語関連の本が60年代以上に出始め、英語翻訳に関する本も出てきた。しかし「逡巡」という言葉が出てきているのだが、その理由は何なのかというと、英語のプロと素人との隔たりがあり、英語教育に対しての疑問が生じたことにより、双方の歩み寄りが進まずぐずぐずしたことから「逡巡」と表現している。

第五章「1980年代―混迷の時代」
本章でいう「混迷」は英語教育におけるものだが、実際には教育全体で「混迷」といる。英語の授業が減らされただけではなく、全体的に授業時間が削減された時代であった。その時代の中で英語学習を主としない「英語本」なるものが誕生し、ベストセラーになっていった。

第六章「1990年代―英語本ブームの時代」
80年代に一般書としての「英語本」ができ、ベストセラーになったことがきっかけとなり、数多くの「英語本」が誕生した。その背景の一つとして、全国展開する「英語塾」が続々と誕生していったところがある。そのため英語学習とともに、英語に関するイロハを知るための英語本がブームとなった。

第七章「2000年代―第三次英語ブームの時代」
1940年代・1960年代と英語ブームを迎えていったのだが、背景はそれぞれ、「欧米化」「東京オリンピック」など事情が異なった。ちなみに2000年代に入ったときに起こった「第三次英語ブーム」はどういった背景があったのだろうか。その理由としてTOEICなど英語の資格試験が増えたこと、そしてビジネスの場でも英語を使用する機会が増えたことにある。また2010年代に入ると、最初に書いた「社内公用語」として英語とすること、さらには企業によってTOEICの点数が昇進にかかわるところも出てきていることから、「第三次英語ブーム」は10年以上たった今でも続いていると言える。

第八章「究極の英語学習法」
英語本を取り上げてきた中で著者が読者のために推奨する学習法を取り上げている。学習前のマインドはもちろんのこと、リーディング・リスニング・スピーキングなど枝葉に分かれているのだが、その中で「マインド」は英語学習の中でもっとも重要な要素といえる。

ベストセラーはその時期の背景によって異なるのだが、それは英語本にも言えることである。しかも英語はまさに社会的な背景はもちろんのこと、教育事情にも大いに影響を受けているのが本書にて紹介されているベストセラーを見ていても良く分かる。そのベストセラーがどのような変遷をたどっていったのか理解できる一冊が本書である。