五感で読む漢字

日本にはひらがな、カタカナの他に漢字も使われる。その漢字は1945字ある常用漢字の他に、1万以上もある常用外漢字もあり、ヴァリエーションが豊富である。その漢字の成り立ちもそれぞれ異なっており、漢字の使用によって表現が彩っている。本書はその漢字について「視覚」「聴覚」「味覚」「嗅覚」「触覚」で成り立つ「五感」でどのようにして感じるのか、そのことについて取り上げられている。

第一章「「目」に宿る霊力」
「視覚」というと「目」「看」「視」「眼」など、「目」を使うような漢字も数多くある。その「目」という漢字は人間の目の姿を模している。その模している姿の成り立ちは旧石器時代の石刻や青銅器、さらには甲骨文などから来ているという。

第二章「聡明さを表す「耳」」
「聴覚」には、「聞」「聡」など「耳」が使われる。もっとも耳で聞くようなものが多いのだが、「聡」という言葉があるなど聞くことについて関係のない漢字でも「耳」が使われる。その「聡」という字についての成り立ちについて聖徳太子の話とともに取り上げている。

第三章「味覚から生まれた「美」」
味覚における漢字は「咀嚼」など食べるような感覚もあるのだが、料理をする際に使う「炙」「煮」、そして「牛」「豚」など食材の漢字における成り立ちについて取り上げている。

第四章「日本の匂い、中国の香り」
嗅覚には「匂い」「臭い(におい・くさい)」「香り」というようなものがある。しかしニュアンスは漢字を使う国である日本と中国とで異なるという。本章ではその「異なる」要素と要因について取り上げている。

第五章「手で触る文化」
触覚とひとえに言っても「触れる」という字の他に「痒い」「熱い」「冷たい」「寒い」などの感覚で用いられる漢字がある。本章ではそういった感覚の成り立ちについて杜甫や李白の詩などをもとに取り上げている。

漢字は成り立ちや歴史・起源を探っていくとなかなか奥深い。漢字を覚えるのも重要だが、それだけでは漢字を楽しむことは難しい。より深く漢字を知りたい、あるいは漢字について理解を深めたい方々のために本書のごとく「五感」にて愉しむことを提示している一冊である。