火山のふもとで

「火山」と言えば、昨年の御嶽山、先月には口永良部島の噴火、箱根山の活発化など火山に関する出来事が数多くある。そういった状況の中で火山のふもとにて暮らしている方々は気が気では無いのかもしれない。

本書は浅間山のふもとにある山荘を舞台にした、ある若き建築家が恋をしながらも、設計コンペに向けた仕事との戦いを描いている。本書の舞台である浅間山は群馬県と長野県の間に位置しており、活火山で非常に有名である。本書にて1982年に噴火をしたことが記されているが、他にも1983年に爆発、2008・2009年、そして今年の6月には2回噴火をしている。

その山のふもとで働く主人公の恋心と、仕事への情熱、そして軽井沢で一夏を過ごした思い出が、スケールが拾いながらも軽井沢の情景を緻密に表しつつ、主人公を始め倒した登場人物も丁寧に描写をしている。しかもその緻密・丁寧な描写はなんとも自然であり、それでいて、夏の暑さと人の温かみが文章から浮き上がってくる感じがしてならなかった。

最も読み終わった読後感も「読み切った」と言うよりも、むしろ地続きになってしまっているような感じがしてならない、それだけフィクションでありながら自然な描写が印象的だった。