関わりあう職場のマネジメント

「マネジメント」という言葉はビジネスで使われることが多い。ましてやその多くは「職場」など、ビジネスが行われる現場にて使われる。実際に「経営マネジメント」はもちろんのこと「組織マネジメント」ということで使われることもある。
そのマネジメントにはいろいろな「関わり」が生まれるのだが、本書ではその「関わり」がいかにして生まれるのか、そしてどのような相互作用をもたらしていくのか、そのことについて取り上げている。

第Ⅰ部「関わりあう職場への注目」
第1章「職場で関わりあい、とことんやる―タマノイ酢のケース」
ここではまずモデルケースとして大阪府堺市に本社を置く食品メーカー「タマノイ酢株式会社」を取り上げている。タマノイ酢の職場では、チームワークを円滑に進められるような組織文化づくりを心がけており、本書のテーマである「関わりあい」にぴったり合う。

第2章「協働と秩序と自律―公共哲学の視点から」
第1章にてタマノイ酢のモデルケースに「関わりあい」の具体像を取り上げてきたのだが、本章ではそのモデルケースを「公共哲学」という学問の観点から考察を行っている。「関わりあい」が公共哲学にもたらす影響として協働によってもたらす秩序や自律の変化が挙げられるのだが、どのような変化があるのかについても言及している。

第Ⅱ部「経営学における関わりあう職場のマネジメント」
第3章「上からのマネジメントと下からのマネジメント―経営管理論における位置づけ」
組織に必要な要素として「マネジメント」が挙げられるのだが、マネジメントと言うと「上から」だけのイメージが強いのだが、下からのマネジメントも存在するのだという。本章ではコントロールの他にコミットメントを観点から「経営管理論」がどのような位置づけにあるのか、そのことについて取り上げている。

第4章「支援・勤勉・創意工夫をもたらすメカニズム―組織行動論における位置づけ」
組織や経営を管理するだけでは、その下にいる社員たちの勤勉や創意工夫が育つとは限らない。もっと言えば育たない可能性が高い。では、勤勉や創意工夫をもたらすために組織行動論としてどのような役割を果たせばよいのか、そのことについて取り上げている。

第Ⅲ部「関わりあう職場のマネジメントの実証分析」
第5章「分析フレームワークと調査概要」
組織における「関わりあい」を実証するために第Ⅲ部では調査を行っている。調査対象は第1章で取り上げられた「タマノイ酢株式会社」、そして名前こそ出ていないものの製造業10社、大手製薬会社のR&D部門がある。そのうえでどのような調査を行っているのか、本章ではその概要について説明されている。

第6章「関わりあう職場と支援・勤勉行動」
組織にどのくらいコミットメントしているのか、そして職場にどのような影響をもたらし、勤勉行動などにどのような影響をもたらすのか、そのことについて取り上げている。

第7章「関わりあう職場と創意工夫行動」
組織においてどのような創意工夫がもたらされるのか、本章では人・仕事に対する依存、職務における自律性などの調査結果などとともに取り上げている。

日本の社会は「協調性」を重視しているのだが、その協調性は時として「同調性」と混同されることもあり、悪影響を及ぼすこともあるのだが、本書のように良い方向に相互作用をもたらす「関わりあい」もある。本書はそのモデルケースを取り上げられるとともに、「関わりあい」がどのような作用をもたらすのか、研究本でありながら、実践的に取り上げられた一冊である。