とんでもなく面白い 仕事に役立つ数学

数学や算数の苦手な人がいる。その理由としていくつかあるのだが、主だったものとして「学校の授業がつまらない」「社会の役に立たない」というような話がある。しかし後者は最近になってそういった考えが覆されている傾向にある。本書のようにビジネスと数学に直結する要因と数学の中で幾何や代数、解析、非線形など数学の中でも非常に専門的なものについて仕事においてどのような客割を担っているのかについても伝授している。

<Season 1>
第1章「最適化・効率化(微分方程式)」
本書における数学は高校などで学ぶ数学というよりも、数学から物理の懸け橋となる「数理科学」の分野である。まずは手始めに「微分方程式」を本章と次章にて取り上げられているのだが、本章では微分方程式を物事を最適化・効率化を行うための「微分法」という微分方程式の基礎的な部分を取り上げている。

第2章「未来を予測する(微分方程式)」
本章では最適・効率化した物事から未来を予測するために微分方程式を用いて変化を算出する方法を伝授している。実際に何を予測するのかと言うと、市場動向というのもあるのだが、他にも自分の人生にまで及んでいる。

第3章「熱と恋(フーリエ変換)」
数学を専門的に勉強していない方は「フーリエ変換」を知る人は少ない。フーリエ変換は数理科学の一つであり、

「実変数の複素または実数値函数を別の同種の函数に写す変換」Wikipediaより)

とある。ではフーリエ変換はどのような状況で役立つのか、本章では第1・2章で取り上げてきた予測の延長戦の他に、温度の変化について当てはめている。

第4章「大局観を手に入れる(固有値)」
「大局観」と言うと数学と関係ないのではないかと思ってしまうのだが、「固有値」という概念でもって手に入れられるという。「固有値」は、

「線形空間で,あるベクトルを線形変換した結果が,そのベクトルの定数倍に等しくなる時のその定数」weblio辞書より)

とあり、主に製品開発の現場で使われるという。そしてその固有値は物語の大枠を見定めるのにも役立つ。

<Season 2>
第5章「仕事で使える幾何(曲率)」
「幾何」と言えば簡単に言えば図形や曲線、円周にまつわる話と言えば早い。図形にまつわる話であれば、見えるものの見方からどのような曲線を描いているのかといったことを割り出すことができるようになる。

第6章「仕事で使える代数(回転)」
「代数」は非常に簡単に言うと、数学で使われるxやyなど数字の代わりに使われる変数のことを指す。その代数を用いて何を求めるのかと言うと、車輪やギアなどで使われる「回転」についてである。「回転」になってくると、数学と言うよりも物理に近い部分もあるのだが、あくまで本書は数学を基軸に置いているため、三角関数や行列などを駆使して伝授している。

第7章「仕事で使える解析(テイラー展開)」
「テイラー展開」とは、

「任意の関数をある点の近くで、多項式近似すること。または区間全体で、多項式の無限和として表すこと」はてなキーワードより)

である。一見難しいように思えるのだが、著者曰く中学レベルでも使える代物であり、なおかつ商品開発において武器になるという。公式自体も難しく書かれているのだが、公式にある変数を一つ一つ当てはめていくと非常にシンプルなものになるという。

第8章「仕事で使える非線形(振動と波)」
本章で取り上げる「振動」「波」を見てみると完全に数学と言うよりも物理に傾いているように思えてならないのだが、そもそも物理と数学は密接とまではいかないまでも関係がある。実際に物理における定義も数学の公式が使われている。本章ではそのことについて取り上げるとともに、著者の専門である「渋滞学」で使われる数式についても取り上げている。

以前にも数学と仕事に関する本をいくつか取り上げてきたのだが、本書は数学の中でも非常に専門性の高いものが取り上げられていた。しかし専門性が高いものであったとしても、シンプルに考えていけば、仕事においても役に立つことができるし、何といっても難しくなくなってしまう。そういう意味で面白味があるといえるが、数学にかなり抵抗がある方は本書に入る前に「基礎の基礎」の本をワンクッションおいてから、本書に入ると理解が早まるように思える。