インド 第三の大国へ――<戦略的自律>外交の追求

人口で10億人以上もいる国は中国のほかにもう1国ある。それは「インド」。インドはアジアを代表した一国であり、これから大きく成長する可能性を秘めている国といえる。日本とはインド独立してから良好な関係を持っており、中国以上に緊密にすべき国の一つといえるのだが、インドにはどのような可能性があり、どのような課題を持っており、そして日本はどう接したらよいのか、本書はそのことについて取り上げている。

第1章「緊密化しても同盟化しない対米関係」
インドとアメリカの関係は同盟関係ではないものの、緊密な関係にあるといえる。しかしなぜ同盟化をしないのはなぜなのか、そのヒントには欧米とソ連の冷戦が大いに影響しているという。

第2章「アンビバレントな印中間系―協調と警戒」
同じ人口を持つ大国というと中国が挙げられるが、中国とインドの関係は必ずと言ってもよい関係とは言えない。その理由として中国の国境問題が挙げられる。しかし対立の関係はあるものの、米国の関係や経済的な要因もあり、ある程度の協調関係があるという。

第3章「緊密化する日印関係と今後の課題」
人口の多い大国として中国・インドはあるのだが、今日のニュースを見る限り日中関係はすでに冷え切っていると言っても過言ではない。では日印関係はどうなのかというと、日中関係とは逆に親密の様相を見せている。そのきっかけとなったのは今でこそオリンピックの関係で話題に挙げられている森喜朗が首相の時の外遊が挙げられる。それまではインドは外交的に干されていた。しかし外遊により日印関係が緊密なものになっていったのだが、それでも同盟を組むべきか、中国との関係は何かという課題も残っている。

第4章「ルック・ウエスト政策とインド洋政策の模索」
今度は大国から新たな可能性を秘めた中東やアフリカとの関係について取り上げている。そういう意味で「ルック・ウエスト」と名付けられているのだが、中東諸国・アフリカとの関係の展開の壁として、第3章と同じく中国とのせめぎあいもあるという。

第5章「南アジア―地域覇権を目指す超大国」
最後は南アジア諸国を取り上げている。インドは南アジアの一国であり、その界隈でも最大の国といえるのだが、その南アジアの関係はどうなのか、本章では隣国事情も含めて取り上げている。

インドは中国やブラジルなどと同じくこれからの可能性を秘めた国の一つである。もちろん他国との関係や内国事情など課題は山積している。アジアを代表する大国の一つであるインドと日本の関係はどうあるべきか、様々な国の関係の事情もあるのだが、それを考えるための参考材料となる一冊が本書である。