西表やまねこ診療所

「総合病院を飛び出し、ボクは島医者になった」

本書の表紙に小さく書かれている言葉である。著者は元々歯科医を目指していたのだが、幅広い医術を学び、実践できることから医師になった。その後総合病院に勤めたのだが、ある事情により島医者になった方である。

島医者になったのは2002年5月、今から13年も前のことだが、なぜ彼は島医者を選んだのか、そして島医者になって5年間の生活はどうだったのか、本書はそのことについて綴っている。

第1章「島医者への道」
最初にも書いたように医者としての著者のキャリアは総合病院から始まった。それから研修医として病院を転々としながら外科医として充実した毎日を送っていた。しかしその日々を過ごすことである「違和感」があった。そしてある出来事をきっかけにその「違和感」が頂点に達し、医療について自問自答するようになった。その自問自答で得た答えこそ、島医者になるきっかけとなり、総合病院を離れ、沖縄県の西表島の診療所に赴任することになった。

第2章「そして離島医療の最前線へ」
西表島の診療所に勤め始めてから、自分自身の限界を知るようになり、その限界を広げるべく努力を重ねていった。また診療所に通う方々、同じ診療所で働く看護師や事務員、そして島に住んでいる方々との交流もあった。
しかし、元々は外科医だったので、専門外の医療も行う必要がある。また連休になると、観光客の診療も行うため多忙になるのだという。

第3章「絶海の孤島で最善を尽くす」
どんなことでも最善を尽くしていけないのは、島医者も同じ事である。しかしその「どんなこと」と言うのが本章で表しているものであり、それは何なのかというと「台風」である。毎年台風が接近したり、上陸したりして、西表島は暴風雨になるのだが、そのような状況でも診療を続けるために模索を続けながら、最善を尽くしたという。

第4章「ボクの“記憶のカルテ”から」
著者が診療する方々は島民もさることながら、観光客も対象にしている。診療する方々の中には、始めて見るような病気もあれば、島特有の病気・けが、さらには観光客に多いのだが、島の医療状況を知らない方々への説明などがある。多種多様な患者がやってくる診療所では様々なドラマがあるのだが、その一端を垣間見ることができるのが本章である。

第5章「“ハッ見”多い島医者生活」
島医者をしている中で様々な「発見」がある。その「発見」に著者が「ハッ」とするから本章のタイトルは“ハッ見”と記載されている。その「ハッ見」する機会は学校や地域の祭り、島特有の動物など、様々なものがある。

第6章「理想と現実のはざまで」
島医者というと地域に愛され、それでいながら地域住民に寄り添いながら生きるというイメージがある。現実はどうなのかというと、それに近いのだが、医師として心がけなければならないこと、学ばなければならないことがたくさんあるという。また「現実」と言うと「医者不足」があるのだが、それについて言及している。

そもそもなぜ本書を手に取り、取り上げようと思ったのか、それは「Dr.コトー診療所」「瑠璃の島」などのドラマを観て、島医者とは何かをわずかながら知ることができた。そしてニュースにて第6章で取り上げた「医師不足」を目の当たりにし、医療とは何かを考えていた。その矢先に出会ったのが、本書である。離島で医者を務めている方はどのような理由からそのキャリアをスタートしたのか、そして島医者の魅力とは何か、それをダイレクトに知ることができる一冊である。

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